二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
物体もじ。
物体もじ。
novelistID. 17678
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

warmer

INDEX|1ページ/1ページ|

 

 ごそごそと身動きしていたかと思うと、ころんと肩口に重みがきた。柔らかな赤毛が、かすかに鼻をくすぐる。

 甘い匂いのする温みがぺたりと懐いてくるのへ、ほとんど反射のようにライカは腕を回した。

 肩に視線を向ければ、力の抜けきった頭のてっぺんが見える。

 その首から続く背中はライカの胸に、腰から下はライカの膝の上に預けられ、当の身体の持ち主はと言えば、TV画面に夢中である。



「猫~。いいよな猫~。か~わいいよな~」



 無意識なのか何なのか、心の声だだ漏れといったつぶやきも匂いと同様に甘く、いかにも幸せそうで。

 その響きと匂いとを独占しながら、ふとライカは思った。



(別に、猫を飼わなくてもいいな)



 思いながら、肩の上の赤い頭に頬をもたせかける。

 基本的にライカは猫好きで、実際に実家では3匹の猫を飼っていたし、幽霊船でもシーという黒猫の世話をしていた。

 それでも今、猫がいなくて物足りないと思わないのは、この赤毛のためだとライカは確信している。



「何だよライカ、重い」

「……お前が言うな」



 人には全体重をかけておきながら、ぬけぬけと文句を言う少年らしさの残る声に、ライカも呆れた声で返した。

 言葉と裏腹に、抱き込んだ腕に少し力を入れて、それ以上の不満を封じてしまう。

 予想通り、赤毛の少年はくすぐったげに軽く笑い声さえ上げた。

 まるで、機嫌よく咽喉を鳴らす猫のように。

 柔らかい髪からは、もうこの少年に染み付いたような、甘い甘い匂い。



「猫、飼いたいか?」



 その匂いにねだられたように、ライカはそう問いかけていた。少年が小さな温もりを欲するのならば、無論、否やはない。



「うーん……」


 思案げに、しばし彼は唸った。

 やがて、ライカの頬を押しやるように顔を上げ、真っ直ぐに目を合わせながら、少年はにこりと嬉しげに笑う。



「ライカは?」



 笑い返して、猫と同じぐらいに温かく感じる髪を撫で、



「俺は、カイトがいるから、それでいい」



 それから、猫とは出来ないキスをした。



作品名:warmer 作家名:物体もじ。