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三歳児とフェルマーの大定理

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気付いてしまった。気付かなければよかった。


たった今脳内をよぎったことはあまりに突拍子もない考えで今まで思いつくことができなかったけれど、いざ出てきてしまえばそれは自分でも説明のつかなかった全てをまるでパズルのピースをはめていくように簡単に片付けてしまうから、きっと間違ってはいないのだろう。
間違ってはいない。正しい答えを出してしまった。


「黄瀬?」


曖昧だった意識はそれを正しく認識した瞬間に確固たる意志を持って体を支配し始めているから、ほんの数秒前と変わらない動作だったとしても箇条に反応してしまって一瞬で顔に熱が集まる。
気のせい、気のせいだから落ち着いてオレの心臓!
いくら願ったところで事実がねじまがるわけはなく、むしろ強く思って自身をコントロールしようとしても一向に下がる気配のない心拍数に、たった今浮上してきたこの感情がどれほど深くに根を張っているかを知らされただけでどうしようもなく頭を抱えたくなった。


「黄瀬どうした、お前変な顔してるぞ」


顔も赤いし熱でもあんのか、と眉をしかめた笠松にあんたのせいだと叫びだしそうになった声を辛うじて喉の奥に留めたのは、混乱してぐちゃぐちゃになった頭の中にまだ少し理性が残っていたからかもしれない。
そうだ、これの原因は全てこの人にあるんじゃないか、そう思ったら少しだけ落ち着いたような気がして、久しぶりに笠松の顔を真正面から覗き込んだ。
しかしやはり気のせいは気のせいでしかなく、更に上昇した心拍数と体温に苦しめられるだけとなってしまった。


「黄瀬、やっぱお前おかしいぞ」


本気で心配してくれている声音にうっかりときめきそうになるが、今はそれに少しだけ苛立ちが募る。
絶対にこの人は自分に原因があるなんて少しも思っちゃいないんだろう、せめて練習がきつすぎたとかその程度で、それよりももっと深刻で解決法の一行に見つからない病に似たこれだとは想像が及ぶ事も無いんだ、きっと。
馬鹿にしているわけではない、しかし自分が一人苦しんでいるそばで普通の顔して原因がそこにいるのはどうも癪にさわる。
そう思うのはこれがはじめての体験だからだろうか、いやもうそんなことどうでもいいのだ。今はただとりあえず少しでも病状を悪化させないようにどこかへ発散させなければならない。
もういっそこの人に爆発させてしまおうか。少しでも揺らいでオレの10分の1でもパニックになればいいんだ。八つ当たりのようなものだったがもうこれ以外に治す方法が見当たらない。
精一杯の精神力で腕と口と喉と顔の支配権を取り返して笠松の腕をつかんだ。
だめだやめとけって、お前は今混乱してるんだよ、そんな声が聞こえた気がしたが、そんなことは百も承知で、だったらどうすればいいんだ!と一蹴してねじ伏せる。
もしかしたら本当はこれはオレの意志では全くなくて、まだ支配権はあちらにあるのかもしれないが、もうそんなことどうでもいい。
考えても考えなくても変わらないなら任せてみるのもありじゃないか。なんにしたって全部オレだ。操られてるわけじゃない。
それにしても気付いて5分足らずで告白ってなんて積極的なの、オレそんなキャラだっけ?
やがて大きく息を吸い込んだ、少し吐いたかもしれない。


これが精一杯だ。















「センパイ、オレセンパイのこと好きみたいなんスけど」




自分が今まで雑誌とかで言ってきた言葉に比べるとあまりにも簡潔でシンプルでロマンチックのかけらも無い言葉と、目の前にいる笠松のポカンとした顔に少し笑った。








end