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とあ魔/上土…内臓反転

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ごぼり、と内臓から血が逆流してくるのを感じた。

肉体再生、などと言ってもその実態は単なるレベル0。できることはほとんどない。かろうじて命をつなぎとめてはくれるが、その負担は凄まじい。流石に魔術の方を最高に極めて、出来れば科学もいい力を──ってのは虫がよかった。科学と魔術、決して交わらないと言われる二つを一身に受けるわが身が悲鳴をあげている気がした。こんな無茶ばかりして、自分はどのくらい生きられるだろう。多角スパイである自分を始末しようとする勢力も多い。

けど、死ぬわけにはいかない。

「まい、か…」

守りたい人がいる。暖かくて、優しくて、ぬくもりをくれる人がいる。

(土御門、やめろっ!)

(土御門、その、無茶はしないでください…あまり…)

上やんもねーちんも、何だってあんなにやさしいのだろう。ああ、待て。これじゃまるで走馬灯だ。気付いた瞬間視界がクリアになり、危うく意識を失いかけてたことに気づく。

「はっ…ぐ、」

病院へいかなければならない。そうして壁に手をついて、ふらりと倒れかける。

倒れは、しなかった。ふわりと受け止めたその体は。かぎ覚えのあるにおい。

「お前、何してんだよっ!」

「か、みやん」

「あわわわ救急車!くそっ!」

慌てて携帯を取り出してかけ始める。何でここに上やんがいるのかにゃー…と口に出したつもりだったがそれは音にならずに飲み込まれた。



勿論、次に目をさましたのは病院だった。

つちみかどっ、と安心したような声音で呼ばれて少しほっとする。

肉体再生のおかげで表面はそれなりに回復しているが内側がぼろぼろらしい、と言われた。心配そうな表情に「上やんは心配症だにゃー。俺は大丈夫だぜぃ」と言うと、ふてくされたような顔で「お前、ウソツキじゃん」と言われる。じゃん、って、何か可愛いなあ上やんは、と笑みがこぼれる。けれどその瞬間ぎし、とスプリングが軋んだ音がして上やんにのしかかられていることに気がついた。

「上やん?」

「あのさー…お前、分かってないみたいだけどさ、」

何かゴミでも見つけたのかと上を見て、その精悍な表情にはっとする。

「俺、相当お前のこと大切なんだよ」

真顔で。そんなことを言われて。

へらりと返そうとして、顔、赤くなってんぞ。と指摘される。なんだなんだ、急に何なんだこの男は。

まあ上条当麻という人間にとっては、たとえ一時のゆきずりの人間であっても守りたいという部類におさまるだろう。一人ひとりがおざなりなのではなく、心からそう思っているから。彼の心は空よりも広く寛大で。どうやら自分はそのうちの一人らしい。たとえそうでなくたって彼は守ろうとするだろうけど。

「……照れるにゃー」

とりあえずそう告げる。別に嘘ではない。嘘ではないけど。

ぴし、と眉をよせた上やんに表情筋がひきつる。なんだってそんな、

分かってない。みたいな。

「……土御門」

低くて、どこかいつもと違うその声音。

耳元でささやかれて思わず首を傾げてその囁きから逃れる。けれどその行動に何を思ったか、晒した首筋を、

ぺろり、と舐められた。

「っ、」

何、何、一体何が起こってる!?

ぞわっとなめられた箇所を中心に鳥肌がたって吐かれた息ですらくすぐったい。

そのまま吸いつかれて体はぴくりとも動けない。我ながら珍しいくらい混乱している。まずい、何かは分からないけどすごくまずい。

随分長いこと吸いつかれていたような気がしたけどきっとそれは気のせいで、唇が離れていっても土御門の呼吸と心音は整わない。ばくばくと鳴る音が本当にうるさくて、顔をあげられない。問い詰めるべきか、そうでないのか。迷っているうちにため息が聞こえて今度こそ顔をあげた。

「上、」「次」

「え?」

「次無茶したら、今度は」「うわわわわわわわ?!上やん?!ちょ、ちょっと待て!」

普段のにゃーとかだぜぃ、とか全部忘れて本気で止めにかかる。上やんはそれを面白そうに笑って「痕、ついてるぜ」といった。