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スプラッシュ!後日談

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「どうすればいい?どうすればアナタはまた、世界がモノに見える?」

「…と言われましてもね。一度ぶち壊されてしまった常識は、なかなか戻らないんですよ」

ふぅ、とため息をつくような仕草をしながら、ドクターはエリシャを見やる。深紅の髪は不満そうに揺れ、「ボクが悪いわけじゃないだろ」とつぶやいている。ドクターは少年に掴まれたままの腕をどうしようか悩んだ。同じような、できそこない。自分だって、同じようなモノが居たらどれだけ嬉しいか。ドクターがかつて愛したのは同じできそこないなのに、自分とは逆の、自分がモノとしか思えない姉だった。だからこそ愛した。けれど「出来そこない」であればどれであろうと、どうしようもなく親近感を覚えただろう。

この少年はドクターにそれを求めている。できそこない同士、ともにいようと。

「俺はアナタの為に、アナタと一緒にいるためにヴァイツハイトでも13人しかいない記録官の数を塗り替えたんだ。博士号も半数はとった。…ロキ。アナタの為に」

「その名前は、嫌いなんですよねぇ」

「アイツには呼ばせているのに?」

少年が敵意をもって睨んだのは、エリシャとは違うウォーターバイクにまたがったモニカの後ろに乗っている銀髪の男だ。豹のような適度な、いや最高の体をした男は、『暗殺』に特化した一族の最強。おそらく、純粋な戦闘能力でいえば、世界でも一番だろう。それが、ハインツ・ザルハイムだ。

「あぁ?なんで俺が馬鹿ロキなんかの為に睨まれなきゃいけないんだ?」

「馬鹿、空気をよめ」

モニカに窘められては不満そうに口をとがらせる。何だかこの仲間たちでは、少年にそのまま喋らせていたら自分ごと置いていかれてしまいそうだ。いたしかたない。

「すみません」

腕を振り払った瞬間、打ち合わせした訳でもないのにエリシャがウォーターバイクを発進させた。飛び乗るように飛んだドクターを、サイドカーが受け入れる。

待って、と追いすがる少年も用意しておいたのだろう。クジラを模した最新のウォーターバイクにまたがった。が、

「うふふ、ふふふ、あっはははははは!撃ちますよ!撃っちゃいますよ!こちらかわいらしい形の銃ですがっ……」

「って、馬鹿ドクター!それ…!」

エリシャが叫ぶ前に、ドクターが放ったそれが少年のウォーターバイクにあたって、弾けた。

「閃光弾!?」

少年の悲鳴にモニカは内心舌を巻く。──相変わらず、化け物だな。あの御仁は。

ドクターの銃は彼個人が開発したものだろう。見たことがない。そもそも、手榴弾型をしていない。というか、銃口から発射されたそれは明らかにほかのものと同じ形なのに、どれも効果が違うのだ。煙を吹いたり音が出たり。

「ランダムに手榴弾系統の効果は全部作っちゃいましたよおおおおおお!」

……まちがいなく、ドクターのあの銃は向こう10年は軍の科学者が躍起になっても作れないたぐいのものだ。

「あはは!うははははは、あーっはっはっは!」

しかし本当、毎度毎度、見事なトリガーハッピーだ。



「って、まいてきちゃったけど、良かったの?」

「あーはは…ふぅ、あ、いいんじゃないですか?死にはしないでしょうし」

弾切れを確認するや否や高らかな笑い声もひそめてちょっと寂しそうな顔をしたドクターも一瞬でまたいつもの飄々とした姿に戻る。口にくわえたゲテモノキャンディー棒もくるくる動く。

「でも…あいつってさ、ドクターの、同類だとか言ってたけど…」

「あー」

ぽりぽりと頬をかいて、目線が泳ぐ。

「…ま、ドクターがいいなら、いいんだけどさ。なんかこの分だと、次の黄金郷にもついてきそうじゃない?」

「うーん、ダナオスみたいなことには流石にしたくないですねー。というか毎度毎度、黄金郷にプラスささって面倒事が加わるのは何ででしょうか」

「今回は、お前の、せいだろ!」

足元のスパナでもって見事にぶったたかれたドクターはぐはぁっと鈍い声を漏らした。

「……それにしても、ロキに執着ねぇ」

「お前はあいつのこと、何かしっているのか」

ざざざざざざっ。気持ちのいい水音が聞こえるなかいちゃつく(と言うとまあ、エリシャあたりは真っ赤になって憤慨するだろうが)二人を微妙な表情で見ていたハインツのつぶやきモニカも乗っかる。先ほどの少年は、ドクターほどとは言わないものの、すさまじい天才だった。

「いんや?馬鹿ロキのことなんざどうでもいいんだけどな。ロキがヒルダにしていた執着みたいなものを、あいつがロキに向けているんだったら……」

「……だったら?」

一度言葉をとめたハインツは、唇をひんまげた。

「──すっごい、面倒なことになりそうだ」