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璃琉@堕ちている途中
璃琉@堕ちている途中
novelistID. 22860
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海をわたって永遠を探そう

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眼前に広がるのは、海原だった。
途方もない大きさ。圧倒的な存在感。
幼い時分、海水浴に連れて行って貰ったことがある。まだ、父母が健在で、父母がまともだった頃。
少女が、幸せだったあの日。
あの日見た海とは、異なる風景がそこにはあった。

「ごらん」

最たるものは、隣に佇む彼だった。
少女と似て非なる、紅い瞳の彼。額縁を乗り越え、勝手に自分を侵した彼。
少女は決して、それを赦した覚えなど、ない。
けれど、彼はどうしたって、額縁の外側に、少女の傍らに立っている。これは、まごうかたなき、本当。

「水平線の向こうを」

促されて、人差し指の先、ずっと先を見つめる。
何もない、何もわからない。
固く引き結ばれた唇に触れたのが、皮膚かナイフか、それさえ少女には、理解出来ない。

「俺は、行くよ」

母なる海の、彼方を目指して。
頬を零れ落ちたのが、血か涙か、それさえ少女には―――、

「待っ…て!」

少女は、腕を伸ばす。身の内の刃の疼きを抑えつけ、無我夢中で叫ぶ。
今、捕まえなければ、と。

―――何を?

「臨也さん!!」

上げた悲鳴に近い絶叫が、産声か断末魔か、それさえ少女には理解出来なかった。
ただ、必死だったのだ。

―――何に?

「″行かないで"!」

振り返った彼が、水面と同じ色をした声で、さざなみのように囁いた。





『海をわたって永遠を探そう』

(最後に見たあの人は、哀しそうに笑っていました)