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オーバードーザーフェアリーテイル

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窓の外にはお星様がいてお月様もいて白猫さんは夢の中で貴方はいない。
貴方がいない。
あなたがいない。
どうしてかしら。
それだけで何もかもが間違いな気がするの。
本当はお月様は夜空の傷跡で痛くて悲しいもので、お星様はプラスチックの金平糖で、白猫さんはわたがしのぬけがら。
ひとりぼっちの間違い探し。
笑って。
笑って。
頭を撫でて。
大丈夫だよって言って。
いつから私、待つことがこんなに怖くなってしまったのかしら。

あの子を待ってた。
ずっと待ってた。
私に笑って、歌って、抱きしめて、一緒のベッドにまあるくなった。
あの子を待ってた。
ずっと待ってた。
そしてあの子は来なくて、貴方がふと現れて。
私に笑って、歌って、抱きしめて、一緒のベッドにまあるくなった。
不思議ね。
思い出は、言葉にすればおんなじなのにその温かさは全部違うの。

それなのに。
そうなのに。
悲しいことを考えると嬉しいことが消えていく。
寂しいことを考えると楽しいことが消えていく。
貴方は悲しいものになっていく。

どれだけ貴方はいなかった。
いつから貴方はいなかった。
いつから私はいるのかしら。
いつまで私はいるのかしら。

終わらない間違い探しの中で、私がそうなの一番の間違いなの。
貴方がいない部屋にいる私が一番間違いなの。
どうしたら私は正しくなるのかしら。
正しければ悲しくないのかしら。
貴方は、いつも、私に、正しかった。

白猫さんの寝息だけ聞こえる部屋の中、私はレコードの掛け方を知らなくて、灯りの点け方も知らなくて(知らないことが沢山あった)(なんでも知ってるつもりだった)静かで薄暗い部屋の中、鏡の前の小瓶に手を伸ばす。
綺麗ね、って言った時、今度塗ってあげるよって笑ってくれた蒼色の絵の具。
きらきら光る小さな星屑の混じった貴方そっくりの。
口紅を塗る様にそうっとそれを指に塗る。
うまくいかなくて、何回も爪からはみ出して、私の指は貴方の蒼に汚れる。
お月様の光を透かした小瓶の色は夜とおんなじ。
蒼くてきらきらしていて見つめているとふっと寂しくなる。
寂しくて、私は私の手をそっと握る。
不器用な私の手は白くて蒼くて、貴方とおんなじ色のはずなのに貴方の温もりは無くて私の悲しさは私の中で空回る。
空回る悲しさは唇から零れ落ちる。


「寂しい。寂しいの。悲しいの。怖いの。何でおいてくの。ねえ、どこにいるの」
「さて、何処にいったんだろうね」


肩越しに声が聞こえて、花びらを拾い上げるように手をとってくれて、暮れる街並みの石畳を柔らかく照らすオレンジ色の灯りみたいに、優しくて、あったかくて、そのくせ意地悪な貴方。
頭の中でぐるぐるしてた色んなものは皆無くなって、部屋の中は何事も無かったかの様にふりだしに戻る。
貴方と私のふりだし。
沢山言いたいことがある。
あった。
それなのに、私の言葉、貴方の手のひらで全部溶けてしまったのかしら。
白くて蒼くてお揃いで、でも違う四つの手。
その中で一番汚れた手の甲に貴方は微笑んで口付ける。


「上手だね」


小さな笑顔。
こんなことだけで嬉しい。
寂しかったの。
寂しかったの。
ぽろんぽろんと涙が落ちて、ごめんねと蒼い指がその粒を掬ってくれる。
少し温かくて優しいそれが私の雫を弾いた時、夜に羽ばたく鳥の音が聞こえた。


ねえ信じてくれる? 
その鳥の羽根の色はね
貴方の指とおんなじ蒼色だったの。