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ごめん、兄さん

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「兄さん、今日雨降るって言ってるから、傘を」
「そんなもの持って歩けるかっての!」
寝坊した兄は慌てた様子で食パンを一枚頬張りつつ寮を出た。
その後ろ姿を雪男は何も言わず眺めていた。兄の為に差し出した傘を、どうしようかほんの少し思案して、結局それは下駄箱の横に置いてある傘立てに戻された。

「まじ、土砂降り!」
空からバケツをひっくり返したような雨に、案の定愚かな兄はびしょぬれで帰ってきた。彼より少し早く授業を終えて帰宅していた雪男はその姿を侮蔑の表情で見つめる。
「自業自得だね、」
「……お前なんか機嫌悪くねえ?」
あらかじめ用意しておいたバスタオルを投げてよこすと、兄は何も言わずに体を拭いた。濡れてしまったブレザーを玄関に脱ぎ捨て、首を絞めていたネクタイを無理に引っ張って緩める。肌に張り付いたワイシャツが彼の胸をうっすらと透かす。
雪男は黙ってその兄を見つめていた。正確には、彼の透けた胸元、ピンク色の突起を。
「雪男?」
兄に呼びかけられてハッとした。雪男は頭を振ると用意しておいた着替えを持って兄にそっと近づいた。申し訳ないけれど、こうなることは予想出来ていたので予め兄の荷物から下着に、それから普段着ているシャツとズボンを出しておいた。
「兄さん、これ、取り敢えず着替え」
「お、おう」
タオルを置くとそれを受け取る兄。彼の頸筋はまだまだ濡れていて、うなじが綺麗に艶めいている。雪男の中で、とんでもない葛藤が飛び交う。

──兄を、組敷きたい

何も知らない兄は安心しきったように雪男の目の前でワイシャツのボタンをひとつひとつ丁寧にはずしていく。露わになる胸、腰、腹。その全てが欲しいなど。
(……落ち着くんだ、雪男)
雪男は何も言わずに眼鏡をちょっと持ち上げた。
「傘、」
突然兄は口を開いた。
「今朝、傘持っていかなかったから怒ってるのか?」
他人の顔色を窺う、小動物のような兄。可愛らしくて仕方がない俺の兄が目の前に居た。雪男は思わずかっとなって顔を赤らめる。
「えっ、」
赤面する雪男がよっぽど珍しいのか、兄は眼を丸くする。
もう我慢がならなかった。いい加減にしろ、っていったい何に向かって叫べばいいのか。スイッチが入ったのと同時に雪男は無抵抗な兄を玄関に思いっきり押し倒していた。ごつん、と頭が床にぶつかる音がしたがそんなものはどうだっていい。
「痛いじゃねえか、雪男!」
抑え込んだ手首を、逃れようと必死に動かすがぐっと力を入れているのだ。そんなもので解ける筈がなかった。兄が叫べば叫ぶほど、がなればがなるほど、彼の吐息が雪男を興奮させた。
「にい、さん……」
脚にあたる硬いものにようやく気がついたのか、兄の動きが一気に固まった。
「雪男……」
何か、得体のしれないものを見るような、恐ろしい、瞳。
当然だった。こうすればどうなるかなんて自身が一番理解していたものを。
しかし、もう後戻りはできないのだ。あとは、兄を手に入れるしか。
「なんだよ、お前……なに……欲情、してんの?」
覗きこまれた兄にずばりと言い当てられて更に興奮が増す。
いつから雪男と言う人物はこのような男に成り下がったのか、自分でも不思議だった。
「僕にだって堪らなく兄さんを独り占めしてしまいたいときだってあるんだ」
兄を組敷く腕に、力が入る。
「優しくは、出来ないよ、ごめん」
言い終わるなり兄の首筋にそっと噛みついた。兄は初めての感触に身を捩る。
「ごめんなんて……言うな、」
耳元で聞こえた兄の声に、ハッとした。

泣き出しそうだった。
しかし、それよりも先に兄が泣いていたのでとうとう泣くことは出来なかった。

「愛しているんだ、兄さん……ほんとに、」

嘘だ、って。頼むからそんなか弱い声で言わないで。
作品名:ごめん、兄さん 作家名:しょうこ