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姉妹<スール>って?

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「あら、笙子さん、今日もお姉さまとご一緒なのね。仲がよろしくて良いわね」
 またである。私、内藤笙子は、校舎の渡り廊下を歩いている最中に、さほど親しくもないクラスメイトに声を掛けられた。隣に居たのは……私の写真部の先輩の武嶋蔦子さまだ。
 蔦子さまは――私のお姉さまではない。それがいつの間にかほぼ全校中に姉妹(スール)として認識されてしまっているのは、傍目から見ればそういう風に見えるということだろう。正直、そう思うと少し嬉しくないと嘘になる。何故ならばその、私は、蔦子さまのことを普通の先輩以上に想っているからなのだ。
 授業を終えて放課後に私たちが向かっているのは、言うまでもなく写真部の部室だ。部室の扉を開けて中へ入ると、部長以下数人の部員がテーブルの周りを囲んでお茶を飲みつつテーブルの上にあるお菓子をつつきながら談笑していた。特に目的がない日はこんなものである。蔦子さまと私の姿を視界に入れると、簡単な挨拶を交し合った。部室には各々が使うデジタル一眼レフからトイカメラまで様々なタイプのカメラが転がり、簡易プリント用のPCとプリンタが置いてある。ちゃんとした所に出す写真や特に出来の良い物は業者さんにプリントして貰っているのだが、撮った写真をすぐに確認するためのコンピュータ類である。
 蔦子さまはPCが開いていることを確認すると、ご愛用のデジタル一眼からメモリーカードを取り出してカードリーダーに差し込んだ。どうやら今日撮った写真をモニタで確認しているらしい。私は忍びやかに近くの椅子に腰を下ろした。蔦子さまは一枚一枚モニタ上の写真をスライドさせていく。その視線はとても暖かい、校内では某大物先輩に『カメラちゃん』などと言われている蔦子さまだが、高校時代という少女たちにとって大切なかけがえのない一瞬一瞬の時間をフレームの中に収めていくことは、この人にとってとても大切な作業だと知っている。そこでふと、蔦子さまの手が止まった。
「うん……悪くないわね」と蔦子さまが写真を見ながら呟いた。
 その写真は蔦子さまの親友である、現紅薔薇さまこと福沢祐巳さまとその妹の松平瞳子さんが仲睦まじく木陰でお弁当を一緒に召し上がっている写真だった。その写真からは幸福さが溢れでているように見えた。勿論、写真部のエースである蔦子さまの撮影技術もあるのだろうが、二人の関係はとても幸せそうに見えた……正直、少し羨ましくなるくらい。
 そして私は常々思っていながらも、口にできなかったことを口にしてしまった。
「――蔦子さまは、どうして私にロザリオをくれないんですか?」
 言った途端後悔の念が体中を駆け巡った。どうしよう、でも言ってしまったものは仕方がない。私は言葉を続けた。
「私じゃダメなんですか? 私なんかじゃ、蔦子さまの妹には相応しくないって。それなら、そう仰って下さって構いません」
 ここまで喋るつもりはなかった。明らかに言いすぎだ。私ってこんなことを口に出す人間だったのだろうか。けれど、それに大して蔦子さまは優しい瞳を湛えたまま、返事をしてくれる。
「『スール』ってさフランス語で『姉妹』って意味じゃない?」と蔦子さまが言った。
「え、あ、はい。確かお友達からそう聞きましたけど」と私。
「姉妹、この場合は血の繋がった姉妹と考えてみてね。姉妹って、大人になるまでは一緒でも、結局離ればなれになっちゃうじゃない? 結婚したりして」まあ最近は晩婚化で結婚する人がと続けて。
「リリアンのスールもその点は少し似てると思うんだ。卒業して大学へ行ったり、就職したりしたら疎遠になってしまう人も多いって聞くわ。勿論、ずっと仲良しのスールも少なくはないと聞くけれど」
だからと蔦子さまは続ける。
「私は笙子ちゃんとは二年足らずの高校生活の間だけじゃなくて、出来ればずっと一緒にいたいの」
 そう言った蔦子さまの顔は少し赤くなっているように見えた。きっと夕焼けの日差しのせいではないと思う。多分、私の顔も嬉しさと物恥ずかしさで真っ赤になっていることだろう。
その後「それでも笙子ちゃんが欲しいって言うならロザリオぐらいあげるよ」と言われたが、私は謹んで遠慮した。何故なら、さっきの言葉だけで十分だったからだ。私はこの『お姉さま』『妹』の伝統が生きづく学園の中で、姉妹以上に大切な先輩と共に、過ごしていこうと決意した。
作品名:姉妹<スール>って? 作家名:紋世