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極上の戯れ

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たまには、こんな戯れも悪くない。

 品のいいソファの中央に深々と腰を下ろす男は、不遜な態度を隠すこともなく組んだ脚をほどいた。
 足元に跪いて一度頭を垂れる。もったいつけた仕草で緩やかに顔をあげれば、見下ろされる視線の冷たさにかすかな高揚を覚えてくちびるを吊りあげた。柄じゃない。自分も相手も。けれどだからこそ、ひどく新鮮で興奮する。
 絡めた視線はそのままに、つい、と男のふくらはぎをなであげる。左手で右脚首から膝頭へ、できるだけいやらしく。ふと右肩に重みを感じたと思えば、男の長い左脚がまるで蹴りつけるようにそこへ押し付けられていて、ますます笑みが深まるのをとめられない。
 まったく行儀のいいことだ。
 問うように片眉をあげて見返せば、男がおもむろに己の指を白い歯で甘噛んで応える。
 それからつややかな微笑。
 うっすらと歯型のついた人差し指を舌で舐める誘惑に、正しく屈服してゾクゾクと背筋を走る欲望の兆し。
 くちびるから連れ去ったうつくしい手に恭しくくちづけると、男が上機嫌に目を細めた。
 許しを乞う。
 首を傾げるかすかな動きに先を促されているような気になって、掴んだ手を強く引き寄せて耳元にくちびるを寄せる。囁くのは甘さを含んだ欲を刺激する低音。
「やらせろよ」
 柄でもない行為を演出しておきながら、言葉だけはどこまでも自分らしく傲慢に。ついに耐えきれなくなったらしい男が吹き出すのを合図に起き上がろうとするが、右肩の重みがぐっと増して動きを阻まれた。
「やらせてほしければ、」
 楽しげに笑みを湛えたままもう一方の手が伸ばされて顎をとらわれる。吐息がかかるほどの距離に美しい顔が近づいて、濃厚な毒をはらむ濡れたひとみに確かに見惚れた。それはまさに。
「もっと上手に、おねだりしてみな?」

 極上の戯れ。
作品名:極上の戯れ 作家名:ましろ