プレゼントはふたつ
いかにもがっかりだといった様相の相手に、僕はいつものようにコーヒーを淹れる。僕も彼女も早起きは苦手で、それでもそれなりの立場にいるものだから、一緒にいるときは早く起きたほうがコーヒーを淹れるのが慣例になっていた。結局、淹れるのは僕の方に固定されてしまったけれど。
「なにため息をついてるんだい?」
ドリッパーから落ちてきたコーヒーをカップに入れる。たしかこれは、5年前の誕生日プレゼントだっただろうか。お揃いで用意されてしまって「お二人とも、仲がよろしいのですね」なんて恋人に言われてしまった。きょうだいだからこそほほえましく思われていたのかもしれない。
「なんで、私たちってきょうだいなんだろうな?」
これは、今日という日に毎年出てくる彼女の嘆き。
「なんか悔しいよなぁ。踊らされてるみたいで」
「そうかな?」
「そうなんだよ」
心底残念そうな彼女の口から、こんな言葉が漏れる。
「別々に育った双子のきょうだいは、事実を知らずに出会うと惹かれ合うって言うだろ。……なんか踊らされてるみたいでいやなんだ」
どうやら、今年の悩みはきょうだいであるという事実よりも、通説になぞらえられてしまったことのようだ。
「まぁいいじゃない。きょうだいだってわかったんだから遡って誕生日プレゼント渡せるんだし」
ポケットからプレゼントの箱を取り出して、彼女の前に置く。
「恋人だったら、そんなことやらないでしょ?」
テーブルの上には、二つの箱。
――今年の誕生日プレゼントと、6年前の誕生日プレゼント。
去年は「5年前の誕生日プレゼント」も同時に贈りあった。
「……まぁ、そうだけどさ」
彼女のポケットからも、僕へのプレゼントが出てくる。
……同じ店の包みに見える……まさか同じものだったりしないよね。
「……キラ、おまえ何買った?」
「カガリこそ」
どうやら考えていることも一緒だったらしい。
互いにプレゼントの包みをはがそうとして、その前に顔を見合わせる。……肝心なことを言い忘れていた。
「誕生日おめでとう」