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【ふたりは~シリーズ 1 】ふたりはともだち

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ハリーはドラコの肩や腰や足にふれて、からだの向きを手で細かく丁寧に直すと、やがてその構えに納得がいったようにうなずき、彼から離れた。

「よし、これでいい!!さぁ、投げよう、ドラコ!」
「ああ」
「右手で振るんじゃなくて、左腕の引きつけで竿を振るのが飛距離アップのコツだから」
「分かった!分かったからっ!」
じれて、うずうずしているドラコの声が面白かった。

「右足に体重を乗せて、剣を振る様に、竿を振りながら左足に重心を移して振り下ろして。で竿を最後まで振り切らずに、途中で止めるのが竿の反発を利用して投げるんだ、いいね」

「イチ、ニ、の―――サン!!」

ドラコの竿がしなり、リールがカラカラ音を立てて糸が勢いよく伸びていく。
思ったより飛距離を稼いで、湖の途中にポチャンと針が落ちた。

「ハリー、今のはどう?僕の投げは、どうかな?」
「いいよ!最初にしては、とてもいい出来だっ!」
ハリーが大きく頷くと、ドラコはそれを受けて嬉しそうに笑った。

本当にドラコの笑顔は心に染み入るほど素敵だった。
白い歯並びも、色の薄いプラチナブロンドも、笑うと下がる目尻もよかった。

「それで、これからどうするんだ?」
「あとは座って待つだけ」
「えーっ、それだけなのか?」
「ああ、時々竿を振って、糸を動かしてね。それでアタリを誘うから」
「ふーん……」
微妙な顔で、ドラコはうなずく。

「なに?もっと違うことを想像してたの、ドラコは?」
「ああ。なんていうのか、釣り糸をたらすと、すぐ魚が釣れるもんだとばかり思っていた」
「そんなに簡単に物事は進まないよ」
ハリーは苦笑した。
「そこに竿をつかんだまま座って、アタリを待てばいいよ」
「……うん」
素直にドラコは草の上に座る。

ハリーはそんなドラコの姿を横目で見ながら、自分の竿の仕掛けに取り掛かった。
ドラコにいいところを見せたいので、ハリーは大物狙いでいくらしい。
俄然張り切って、仕込みを始めてリールをセットして糸を結んでいると、隣でドラコが大声を出して、ハリーを呼ぶ。

「ハ……、ハリー!きている!アタリが来ているんじゃないのか?」
「―――えっ?そんな早くにアタリが来るかな?」
胡散臭そうにド素人のドラコの声に顔を上げると、立ち上がって必死で握っている彼の竿は、確かに強くしなっていた。

ハリーも慌てて立ち上がり、ドラコの横に立つといっしょに竿を握る。
「いい、まだ引いちゃダメだからね。まず合わせといって、糸をゆるませて……」
強い引きのある竿を下げて、張っている糸をわざと緩める。
そうするとかかっている魚が少しだけ自由になった体で水面深く潜ろうとする。

「さぁ、今だよ。一気に上に引いて」
グンと引っ張ると、不安定なぶれたような振動から、ダイレクトな強い引きに切り替わったのが、竿に伝わってきた。
魚がグイグイ引っ張って逃れようとするのが、手に取るように分かる。
「―――そう!それでいい。これで釣り針が魚の口にしっかりかかったから」
ドラコは目をいっぱいに開いて頷く。

「で、リールをゆっくり巻いていって……。そうそう……。出来るだけ一定のスピードで巻くことが大事なんだ。」
ドラコの竿がしなるたびに、水面が波立ってきた。
黒い影が二人の近くまで引き寄せられてくる。
思ったよりそれは大きくて、竿の引きが強い。

「いい、僕が合図をしたら力いっぱい後ろに竿を引いて。僕もいっしょに手伝うから」
「こんなにしなっているから、折れて逃げないかな?」
「大丈夫!―――じゃあ行くよ!」

「―――せーのっ!」
かけ声とともに勢いよく引っ張りすぎて、勢いがつきすぎたふたりは、釣竿もろとも思い切り後ろにひっくり返り、ドシンと尻餅をつく。
「いてぇーっ!」
思わずハリーは悲鳴を上げた。
痛さに顔をしかめていると、ハリーのからだの上でひっくり返ったままのドラコが叫ぶ。

「あれは何、ハリー?あの魚は何なんだ?」
「なんだと言われても、近づいてみないと。でも僕は腰が痛くて……あいたた……」
「何、年寄りみたいなこと言っているんだ、もう!」
「キミはいいよ。僕というクッションがあったから痛くはなかったと思うけど、僕は地面で容赦なく腰を打ったんだぞ」
「いいから!早く、早く!」
ドラコに腕を引っ張られて、ハリーは渋々立ち上がり、その暴れている魚に近づいた。

その魚は体長が40cmほどで、細長くからだ全体に黒い斑点があり、全身が銀色にピカピカと輝いていた。
「この魚は何、ハリー?」
「あ―――っと、……これはニジマスだよ」
「食べれるのか?」
「うん、おいしいよ。バター焼きや燻製や塩焼きにしてもイケるよ」
「じゃあ食べよう!今すぐ食べよう、ハリー!!」
嬉しそうにドラコは言う。

「えっ!でも僕はまだ釣りをしてないんだけど?」
「いいだろ!食べたい!自分の釣った魚を食べたいんだ。お願いだ。僕たちはともだちだろ!」
ドラコは草の上で盛大に跳ね回っている魚を指差して、ハリーをふり返り笑いかけてきた。

「まったく、『ともだち』と言えばなんでも許されると思ってない、ドラコは?」
「そんなことない!でも食べたい!作ってくれ!僕は塩焼きがいい!」
邪気のない笑顔で、味付けのリクエストまでする始末だ。

「え゛ーっ、全部僕がするの?」
「そうそう!ああでも、火を起こすのは僕がやるから」
「じゃあ……、魚の仕込みは僕にしろってことかな……?」
「うん!ハリー、ありがとう!」

「ありがとう」と満面の笑みでそう言われたら、もうハリーはお手上げだ。
ドラコは自分では気づいていないみたいだけれど、とてもわがままな性格だった。
でも、それが彼の魅力だから仕方がない。

ハリーはため息をつくを肩をすぼめた。
「OK、分かったよ。とびきりおいしく調理するから」
ドラコが笑ってくれるなら、ちょっとした苦労など仕方ないことだ。

ハリーが暴れている魚を持ち上げると、それを見て
「僕が釣ったんだ!」
と嬉しそうにドラコは何度も言う。
「ああ、キミは才能があるよ」
笑ってハリーは答えた。

ドラコは喜びと興奮で顔を上気させて、ハリーを見つめる。
「僕はなんて運がいいんだ!ハリー、キミとともだちになれたことが、何よりも嬉しい。本当に!心から!」
ドラコはただハリーの顔を見て笑った。

それだけで、ハリーはとても幸せな気分になった。
「もちろん僕もだよ、ドラコ」


くすぐったいような、フワフワした感じ。
寄り添うふたりが、共有するそこには、やさしい時間が流れていた。



―――ふたりはともだち。
     これからも、ともだち。
        ずっと、ずっと、ふたりはともだちだ。


   ■END■