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波間に揺れる

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大空に舞う事を至高の喜びとするガルーダ隊1番機。
愛機に乗れば水を得た魚のようになる。ついていくのは至難の業、今まで彼の隊に所属された者たちは悉く脱落し、故にガルーダ隊に所属する者は須らく少なかった。

ところがだ。
先の大戦で緊急編成されただけのメンバーが非常に優秀かつウマが合ったらしく、たった2機しかないこの隊は次々と功績をあげ、遂にはグレースメリア解放をもたらした。

ガルーダ隊。今やエメリアでその名を聞かない者はないだろう。
その男達が、海に向かって釣り糸を垂れている。

先日した約束した通りに2人は海へと出かけていた。
名のらなければそうと知られる事は無い。中身はどこにでもいる普通の男だ。

「釣りなんて久しぶりだよ」

そういう2番機シャムロックの為に、1番機タリズマンは道具を用意しやり方を伝える。とりあえず釣りで最初に覚える事は“焦るな”ということだけだと言うと、すぐにのんびりしはじめた彼に、シャムロックは微笑んだ。

全く、空とは大違いだ。

あれだけ天才的な機動で他の追随を許さない男が、羽を休めるとこうなるらしい。

そして彼が用意してきた道具を見やる。詳しいことはわからないが、色々取り揃えている辺り、言葉通りよく釣りには来ていたようだ。

「前にスネークピットとアバランチとも来たが、あの2人は騒がしくて魚が逃げてしまった」

話すには楽しかったけれどと続けるタリズマンに、シャムロックは「へえ」と言葉を漏らす。

「僕は誘ってもらった事はないけど?」
「戦争が起こる前だ」
「それは納得」

戦争が起こる前、同じ師団に所属はしていたが、タリズマンもシャムロックも互いに顔を知っている程度で会話など挨拶程度だ。これ程親しくなったのはお互いがあの悲劇を乗り越えたからこそであったのだが、どうにもシャムロックは釈然としなかった。

それを言うなら、アバランチとスネークピットもそうではないのか?

「どうしてもっと早く話さなかったんだろうね」

折角知りあっていたのに。
その言葉に、波間に揺れる浮を眺めながらタリズマンは―――――何も答えないまま曖昧な笑みを浮かべた。



作品名:波間に揺れる 作家名:やつか