学パロ グリイル
俺×イールフォルト♀
俺が学校へ行くと、クラスの中心人物の近くにいるあいつを見つける。
教室の中で机の上に座っている水色の髪の男に笑いかけている。
何人かの仲間に囲まれ、談笑する姿は毎日見られる。
不良っぽいリーダーの男だが、真面目に学校にきているあたりそんなに悪い人物ではないのだろう。隣のクラスの静かな黒髪の男と異様に仲が悪いそうだが。
金髪の彼女が笑った。男に微笑んでいる。
俺はそれをみて、教科書に視線を落とした。
いつもより暑い夏だった。
そのせいか学校にも頭の沸いたやつが出てきて、何度か大騒ぎになった。
もともと治安の良い学校ではない。偏差値も低く、底辺の学校と言われている位だ。
だから、クソ野郎が10人や20人いても驚かないが、いくら何でもクソ過ぎるだろう。
金髪の彼女が、数人の男に暴行を加えられていた。いや、加えられようとしている、が正しい。彼女の胸ぐらを掴み、今にもその服を破ろうとしている。
顔にけがは無いようだが、彼女はそこまで大人しい性格ではない。灰色に汚れている制服をみて、蹴るなりしたんだろうと想像がつく。
建物の陰になっていて、外からは見えない所での暴行。これを放っておくと、もしかしたら取り返しのつかない事をするのではないだろうか。
俺はこの学校の人間にしては暴力的な遺伝子に欠ける男だが、女性が今にも数人の男に暴行を加えられようとしているのを黙ってみているほどチキンでもない。屋上にいた俺は、屋上プールの水をそいつらにかけてやった。
「うわっ!」
勿論すぐ傍にいる彼女にも水はかかった。吃驚したのかきょとんと目を丸くしていて可愛い。美人だとは常々思っていたが、その上可愛いとか最強ではないだろうか。
当然アホ共は上を見上げる訳だが、顔を覚えられる事が気にならない程男前ではない俺はすぐ隠れた。また俺はクラスの連絡網を使い、彼女がいつも一緒にいる男の携帯に連絡を入れた。
[あ?誰だてめぇ]
「一応同じクラスの人間なんだけどな・・・そんな事より、君がいつも一緒にいる女性が危ないから、すぐ来た方がいい」
それだけ言うと俺は電話を切った。俺はまた水を汲んで適当に下にぶっかけた。怖いから姿を隠しつつ、適当に落としたから当たっているかどうかはわからない。ただ少し時間を稼いで、早くあいつがくれば良いと思った。
「イールフォルト!」
下からあの男の声が聞こえる。
「グリムジョー!!」
彼女の声は震えていて、こっちの胸が痛くなった。
人を殴る野蛮な効果音が聞こえてきて俺は耳を塞ぐ。その音が聞こえなくなったときに恐る恐る下をみて、少し後悔した。
二人が抱き合っていた。
怖がるイールフォルトを普段の様子からは想像できないくらい優しい仕草で髪を撫でるグリムジョー。
美男美女のカップルで、お似合いだと思った。
掃き溜めの中の鶴、ろくでなしな男だらけの中にあって美しい彼女。
俺なら彼女を危険な目にあわせる事になんてならないのにな、と少しグリムジョーが羨ましかった。