SLAMDUNK 7×14 作品
その言葉に、止まっていた時間が動き出す。
宮城は…、安田と組んでパス練をしてる。
立ち尽くしたままの俺に近寄ってきた赤木は、今日は帰れ、と一言いった。
ただ頷くしかできなかった。
去り際、ふと振り返ると、宮城と目が合った。
ほんの一瞬だけ、アイツはつらそうな顔をして、すぐに顔を背けた。
そのまま俺は、体育館を後にした。
宮城が好き、かもしれない。
たとえこれが恋じゃなくても。
目で追ったり、考えてしまうくらいには、宮城を意識しているということだ。
償いなんかじゃなく。
部室で着替え終えたあと、2コ左隣のロッカーの前に立つ。
自分でもバカバカしいと思いながら、そのロッカーにそっと触れた。
ゴメンな、と胸の中で呟いてみる。
本当はオマエが悪いんじゃないって分かってるんだ。
俺が一人でパニクっただけで、オマエは何にもしてないもん。
むしろ、こんな俺に親切にしてくれて、感謝さえしてるよ。本当に。
だから、
「ごめんな…」
言葉にすると、泣きたくなってきた。
明日からも小暮に迎えに来てもらわなきゃ、なんて考えながら、ドラムバッグを手に取った。
「アンタでも、謝るんだね」
とっさに入口の方を向くと、宮城がバツの悪そうな顔をして立っていた。
「オレも悪かったよ。あんなにムキになる事じゃなかったから」
うまく返す台詞が思い浮かばなくて、きゅっと下唇を噛んで下を向いた。
「三井サン」
独特のイントネーションで呼ばれると、気持ちがざわつく。
俺はバッグを握る手に力を込め、歩き出した。
出入り口は宮城が塞いでいる。
「帰るんだよ。そこどけよ」
しばらく俺の顔を見ていた宮城は、スッと場所を空けた。
横を通り抜ける。
「また明日ね、三井サン」
背中に声をかけられて、おう、と短く返事をした。
また、明日…。
それまでに、この感情は薄れてくれるだろうか。
明日、宮城に会うときに。
いつも通りの自分でいられるよう、祈りながら空を見上げた。
作品名:SLAMDUNK 7×14 作品 作家名:鎖霧