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いつのまにか

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ほらね。また、すっと引く。
振り返れば、目を細めて優しく笑ってくれるの知ってる。
スガタ君は私の友だち誰とだって上手くやってくれるけど、
気がつくといつも一歩後ろに下がっちゃうんだ。
私と友達が並んで話すのを見て、安心したみたいにすっと下がる。
自分がいなくても大丈夫なことに、安心したみたいにすっと下がる。
仲の良い友達を連れてくればスガタ君がそうすることがわかっているのに、
そうされたら何だか悲しくなることがわかってるのに私はやめなかった。
スガタ君が何もかも諦めてしまっている。
だから私が見つけてあげやきゃ。だって、もしかしたらいつか。
「ワコが好きな方、選べよ」
さりげなく後ろに下がりながら、スガタ君は底の見えない微笑を浮かべる。
あー・・・これはまたロクでもないこと考えてるな。
こういう時のスガタ君ってちょっと正直めんどくさい。
めんどくさいし、率直に言って腹立たしい。
からかってるんでもない。意地悪でもない。試しているんでもない。
スガタ君は選ばれないことを望んでいる。
これを三角関係とか言われるのは女子として甚だ不本意なのよね。
スガタ君はずっと長いこと諦めたままでいて、今はもう終わらせたくて仕方がないのだ。
それはスガタ君の望みで私の望みじゃないよね。
だから、わかっていても無視する。
スガタ君が第一フェーズを使うのだって止める。
ずっと前に決めた。私はそのためにここにいる。
「またそういうこと言う~・・・」
いつもの考えすぎが明確なベクトルを持ち出したのは、タクト君が現われてからだ。
私がタクト君を選ぶことが、スガタ君の望み。
もうオレなんていらないだろ?って何度も問いかけられて、
そんなことないよって、何にも考えてないフリで否定する。
死んだように生きていくために手を繋いで目を閉じたのに、
その手をほどいてスガタ君は一人で歩き出そうとしている。
タクト君が現われた途端に突然動き出した何もかもを、
待ち構えていたように決然とスガタ君は心を決めてしまった。
「お前が勝ったら、ワコとの婚約は白紙に戻そう。」
そうして、私1人を船板に押し上げようとする。
1人で何もかも決めてしまう。一人ぼっちの王様。
私だってスガタ君を助けたいのに、その美しい瞳に私の心は映らないのだ。
ザメクの継承者の役割はスタードライバーよりは巫女に近い。
王のサイバディは封じなければならないものだからだ。
王のサイバディは明らかに異質で、凡百のサイバディとは一線を画している。
自らのスタードライバーを支配下に置こうとする王の強烈な自我は、
スタードライバーとして目覚めた日から選ばれた者を苛み続けている。
くるくると表情を変えた無邪気な子どもが穏やかな無表情を獲得するまで、
歌手を夢見た子どもがただ歌が好きなだけと折り合いをつけられるまで、
お互いをお互いの拠り所にして私たち必死で手を繋いでいた。
強く握りすぎて、こんがらがってわけがわからなくなった。
「も~またそういうこと言う」
呆れたフリで2人に背を向けて、私はゆっくりと踏み出す。
しばらく前に決めたのに、一人で歩き出すにはまだ勇気がいる。
でも、私が歩き出せば2人はついてきてくれるんだって分かったの。
私が進めば、タクト君とスガタ君は並んで後ろから着いて来る。
いつのまにか。
いつのまにか、タクト君は私が連れてきた私の友達じゃなくて。
「これからは、お前がその傘に入ればいい」
「面白い! その冗談本気にするぜ?」
私のことなんかそっちのけで、威勢よくタクト君が答える。
私はいつも誰かを連れてきて、スガタ君と私で三角形を作った。
スガタ君はいつも天辺。いつも1人きり。
私はずっとずっと、スガタ君を1人きりにしない誰かを探していたのかもしれない。
そうしたら、今度は私が天辺になっちゃったけど。
振り返りながらそっと2人を盗み見るのは楽しくもあり、
一人だけ仲間はずれになったような寂しさもあり、
どちらに対してなのか嫉妬なんかもないとはいえず、
なんだかとにかく複雑だ。でも、全然嫌な気分じゃない。
後ろに下がったスガタ君は、いつもこういう気分でいたのかな。
スガタ君は放っといても後ろに下がっていくから、私が代わりに前に進むって決めた。
スガタ君がナイフをくれた日に、そう決めた。
タクト君はカルネデアスの舟板。
スガタ君は私をそこに引き上げて自分が沈むって決めたみたいだけど、
私の望みはスガタ君を引き上げて自分は泳いで進むことだ。
だって、泳げるんだもの。船板なんて必要ない。
大丈夫よ。人魚みたいにするりと波間を潜ってみせる。
だから。
だからお願い、ついてきて。
タクト君と2人で、バカみたいな言い争いしながら。
お願い。私は前に進むから、ついてきてスガタ君。
『僕の巫女が、君でよかった』
初めて会ったスガタ君が、笑ったことを私は忘れない。
だから、大丈夫。幸せになって。なっていいの。
タクト君みたいに、本土までだって泳いで見せるから。
作品名:いつのまにか 作家名:ちた