Angel Face -天使の横顔-
*特徴*
ぷくぷくのほっぺた。
ホグワーツに入学したばかりのドラコはまるで天使のようです。
*魅力*
賢者の石の頃のチビチビした小生意気なドラコ。
秘密の部屋の意地っ張りなくせに、とても臆病なドラコ。
それでも大きくて零れ落ちそうな薄水色の瞳は澄んでいて、まるで天使のようです。
*お風呂*
お風呂上りは冷たい水を飲むのが習慣です。
満足げにそれを飲むと、枕を脇に抱えてベッドに戻り、ヨチヨチと小さいからだで、そこによじ乗ります。
まだ一年生ですので、ベッドは背が高くて、小さなドラコはちょっと大変です。
実家から届いたふわりとした軽い白いリネンのカバーに囲まれ、ふかふかの布団に包まって眠るドラコは、まるで天使のようです。
*学園生活*
学校での毎日はきっちりと着た制服は着崩すことなく、髪を上げてキビキビと隙がなく行動しても、思わず動く階段で派手にけつまずくドラコ。
(それは生粋のドジっ子だから)
英雄に見つかり笑われて、「笑うな」とキャンキャンと吠えまくります。
でも、ハリーにはそれがかわいくて仕方がありません。
だって、ドラコが真っ赤な顔で怒り、必死で反論し食ってかかる相手はただ一人──、自分だけだと知っているからです。
怒りのために首筋まで桃色に蒸気させるドラコは、まるで天使のようです。
*散歩*
今年最初の初雪が降り積もった朝、嬉しくてドラコはサクサクと歩いて散歩していました。
突然見えない雪溜まりにズボッと足を突っ込んで動けないところを、後ろから偶然(?)についてきたハリーが、「仕方ないなぁ」と言いながら助け出します。
「お礼は、ドラコ?」と言うと、思いっきり「バカ!余計なお世話だ」と逆切れします。
でも、ハリーはそれがかわいくて仕方がありません。
だって、ドラコが少しホッとした顔で、自分を見上げたからです。
相手の真っ白い肌に雪が降りかり、ほほの熱さで解けていくのを、うっとりと見詰めるハリーです。
その風情は、まるで天使のようです。
*夕立の午後*
プラチナに近い髪は濡れて、色の濃い金色の髪に変化して、突然降り出した雨に、ふたりはずぶ濡れになりました。
「だからこんな曇り空の天気の日に、箒での遠出はイヤだったんだ」と文句を言うドラコ。
ハリーは「ごめん」と謝りながら隣を振り返り、相手を気遣おうとした途端、慌ててぎこちなく視線を外します。
ドラコのシャツが湿って、半分肌に張り付いているからです。
ぐっしょりと濡れた服は、相手の細い体のラインを浮かび上がらせます。
ハリーは小さく咳をしました。
振り向くドラコのほほからあごのラインに、雨の滴が一筋流れていきます。
不思議そうに見詰めるドラコの灰色の瞳は、まるで天使のようです。
ずっとふたりは立ち尽くしています。
雨宿りのための軒下から動けません。
だって雨はまだ降り続いているからです。
*アドバイス*
ことある事に「愛に勝るものは何ない。自分の心に素直になって」と、わたしは彼に言い続けていました。
クリスマスに近い夜に、突然怒ったり落ち込んだりして悩んでいる彼に、再び「素直になって。じゃないとあなたは一生後悔するわよ」とアドバイスをします。
何かを深く考え、ゆっくりと頷くドラコ。
暖炉の暖かなオレンジの炎をほほに受けて、不安げな──、それでいて何かを決意するドラコの横顔は、まるで天使のようです。
*恋人の定義*
『恋人』とは好きな者どうしの思いが通じ合ったことを言います。
──ドラコの場合は、どうなのでしょうか?
バレンタインデーには今年もたくさんのチョコが、ドラコの元に届きました。
甘いものが好きなドラコでも辟易するほどでしたが、結構な量を一ヶ月かけて全部食べました。
そのプレゼントに託された思いの一つ一つに答えることは出来なくても、せめてものそれが照れ屋で意地っ張りな彼なりの、精一杯のやさしさなのです。
でも、たったひとつだけ手をつけていない、大切に枕元に置いているギフトボックスがありました。
メッセージカードには「H」とかしかなかったけれど、それで十分でした。
ホワイトデーにはお返しをしなければなりません。
彼は別段、お菓子や物を欲しがっている様子はありません。
「僕の欲しいものはたったひとつなんだ」とつぶやき、ハリーは俯き頬を染めます。
「困ったな……」とドラコは考えます。
消灯後、天窓を見上げて「どうしようか……」と考えるドラコの瞳には星が映りこみ、瞬いて、まるで天使のようです。
*10年後*
「いっしょに暮らせるはずがないじゃないか!まったく!」
そう言いながら、ドラコはドスンとソファーに腰掛けます。
不機嫌にそっぽ向いて、腕組みまでする始末です。
軽く前髪が降りた横顔は青年のそれで、昔のあどけないかわいい表情は、どこにもありません。
ハリーは分かっています。
ドラコは真剣に自分たちの未来のことを考えているから、怒っているのだと。
いい加減で楽天的なハリーは何度も、この彼の真面目さに救われました。
とても感謝しています。
愛おしいのです。
ハリーはどうしても、今夜言いたいことがありました。
どんなに否定されても、何度でも言い続けるつもりです。
そうして、とても渡したいものが、ジャケットのポケットの中にありました。
相手の手をとり、真剣な声でハリーは言いました。
「聞いて欲しいことがあるんだ、ドラコ」
眉間にシワを寄せて相手を見上げるドラコの瞳には、いろんな感情が渦巻いているようです。
感情のもつれた糸は深く絡まり、それを解くのは難しそうです。
しかし、時間は十分にあります。
大丈夫です。
明日は休日で仕事はなく、ふたりきりの夜はこれからです。
長い夜になりそうです。
……きっと翌朝、目が覚めると隣には、安らかな顔で眠っている彼がいると思います。
朝日の中、まだ瞳を閉じてぐっすりと眠っているドラコを愛おしそうに見詰めて、きっとハリーとこうつぶやくと思います。
「まるで天使みたいだ」と。
■END■
*絵本を思い浮かべて書いたので、語尾をやさしく語りかけるような口調にしました。
作品名:Angel Face -天使の横顔- 作家名:sabure