二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
まさきあやか
まさきあやか
novelistID. 8259
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ムンプスウィルス

INDEX|1ページ/1ページ|

 
アルコバレーノの呪い。それは時を止めること。
 赤ん坊の姿となり、死ぬことはあっても成長することはない。それはつまり、彼らが生きてきた年数をエネルギーとしてアルコバレーノのおしゃぶりを封印し、彼らが成長するエネルギーを持って封印し続けていた。
 いくら現代科学の枠組みの外にある力であるとはいえ、ある程度の法則性や質量保存の法則は適応される。よって正式なアルコバレーノにならなかったラル・ミルチが成長したことも、ソコに理由があるとも言われていた。
 そして今、アルコバレーノの封印のあり方が大きく変わった。ボンゴレの大空のリングとシモンの大地のリングがそれぞれ封印が解かれ、ジッリョネロの海のリングが封印されたことによるバランスを取るためだ。
 もともとアルコバレーノのおしゃぶりそのものが、大地、大空、海の三つで形成される本来のトゥリニセッテの補助的な役割をしていたから、当然と言えば当然だろう。
封印の形式が変わったことによって、リボーンたちは成長を余儀なくされたのだが、そのことについては彼らも文句はない。誰だって赤ん坊のままでいたいと思うものはいないだろう。
 しかし、そんな彼らも一つだけ失念していたことがあった。

「……アルコバレーノでもおたふく風邪になるんだねぇ」
「くそ、迂闊だったぜ、コラ!」

 しみじみと言う綱吉に、そう言ってさも忌々しいと言うように返したのはコロネロだった。その隣ではスカルとマーモン、それにヴェルデが真っ赤な顔でウンウン唸っていた。
おたふく風邪、ムンプスウィルスと呼ばれるウィルスが原因となる病気で、日本では子供が罹る病気とされているが、実際にはウィルス性なので、抗体がなければ大人でもかかる。
 発病すると頬がパンパンに腫れることから、おたふく風邪と呼ばれているが、ネーミングとは裏腹に成人男性が罹ると生殖器に深刻なダメージを与えることで有名だ。
 日本では新・三種混合ワクチンにより減少傾向にあるが、発展途上国では依然として驚異である。
 沢田家では綱吉はワクチンだったのだが、ランボがどこからか拾ってきて発病。その後、イーピンとリボーンに感染した。
 アルコバレーノであるリボーンにも感染したことはリボーン自身驚いた。そして、名前の通りおたふくのように腫れ上がった頬をみて笑いにきた他のアルコバレーノにも次々に感染し、沢田家はにわかに野戦病院のようになってしまったのだった。
 どうやら改めて成長しているせいか、あらゆる交代がリセットされてしてしまったのではないかというのが、とりあえずと呼び出されたシャマルの予想だ。―――ちなみにラル・ミルチがいなかったのでシャマルはさっさと帰った。

「いや、アルコバレーノだから病気で寝込んでいるのを見られたらまずいってのはわかるよ」

 いくらマフィアにはなりたくないといっている綱吉とて、その程度は想像できる。闇の世界のバランスをになうと言うアルコバレーノだ。早々、弱っている姿を身内と言えども見せるわけにはいかないだろう。

「マリアさんとこでもいいんじゃないかい?」

 九年と十ヶ月後の世界と違ってまだ存命のはずだ。という綱吉に、ヴェルデが首を振った。彼女は確かにアルコバレーノのドンナではあるが、同時に別の一家を率いている身でもある。
 むしろアルコバレーノのドンナであることを隠さなければいけない立場だ。―――もし知られれば、中立であるアルコバレーノが特定のファミリーに協力するのではないかといらぬ疑いを発生させるだけだ。

「……それ、オレも同じ立場なんじゃ?」

 いや、マフィアにはなりたくないけどね。といいつつ顔をひきつらせる綱吉にスカルがどこか意地の悪い笑みを浮かべる。

「お前はリボーン先輩の教え子だからな」
「あれ、とばっちり?むしろ納得しかかった自分に絶望しそうだよ」

 迷惑をかけた所で、おれの良心痛まない。というスカルに、アルコバレーノにそもそも良心が存在するのかと綱吉は胡乱な眼差しを向ける。
 そんな綱吉に、マーモンが苦笑いを浮かべた。

「パシリはともかく、まぁ次代ボンゴレの君の周りならさほどおかしい訳じゃないんだよ」

 ボンゴレはそれだけ特別だからね。と、マーモンは赤い顔をしながらそう付け足す。

「それに、教え子にトラブルを与えるチャンスがあったら遠慮なく積極的によこせと」
「リボーン!!」

 最後に教え子に看病されながらもそう付け足した風――彼はイーピンの様子を見に来て感染した口だ――に、綱吉が抗議の声を上げる。
 しかしながら、先に患ったおかげで一人さっさと快復したリボーンは、風の言葉に一瞬余計な事を、という顔をしたが、すぐさま教え子の抗議を鼻先で笑い飛ばした。

「おれはオメーのカテキョーだぞ?教え子の成長の機会は逃さねーんだぞ」
「「「「………………………」」」」」

 確かに教え子の成長も望んでいるだろうが、それ以上にトラブルに翻弄されている教え子を見るのが愉しくて仕方ないのだろう。そう、間違いなく断言できるリボーンの笑顔に、彼の教えはもちろんのこと、同胞たちもそっと口をつぐんだのだった。

 数年後、今度は成長痛でそろって寝込む――成長が不規則なので、一気に来たらしい――アルコバレーノの姿がある。その頃にはすっかり慣れきった沢田家の住人に、まとめて部屋に放り込まれることとなるのだが、それはまた別の話である。

「少しは労われ、コラ!」
「うん、すこーし我が身を振り返って見ろ。みろ、リボーンなんか無言で寝てるじゃないか」

 成長痛に効く薬なんぞ無い。とばかりに放置されていたコロネロが不満そうに言えば、綱吉が無言で横たわるリボーンを指さした。

「……たぶん、痛くてしゃべれないだけだと思いますよ、あだ!」
「よけいなことはいうな、パシリ」

 かっこつけだから。と言ったスカルは、リボーンの投げた枕に悲鳴を上げる。ある意味で平和なワンシーンだった。

作品名:ムンプスウィルス 作家名:まさきあやか