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次もまた…

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次…生まれ変わっても、自分は自分であるか……

そんなこと…
あるわけないんだ……

だから……だからきっと…





帝人は週末いつも通りに臨也の家へお邪魔させてもらっている。
臨也の家は帝人の家と比べ物にならないくらい、いかにも“良い物”が揃えられている。

しかし今日はどうも帝人のテンションがいつもより低いため、臨也は少し心配になり、ソファーに座っている帝人の隣へと腰をおろして帝人の顔を覗き込んだ。

『帝人くん…どおしたの?
 なんか元気無いみたいだけど…。
 まさか風邪!?
 ちょっとおでこ貸してっ!』

臨也はそこまで一息で言うと帝人の短く切り揃えられた前髪を軽く上げ、自分のおでこを近づけてきた。

ぼーっとしてた帝人は臨也に言葉をかけるひまもなく、臨也の冷たい手がおでこに触れて、『ひぇっ!?』とうわずった声を出してしまった。
臨也のおでこと帝人のおでこがコツンッと合わせられた。

(っっ……
うわぁぁぁぁーっっ
臨也さんの顔がぁ………
近いし………
しかも、た……体温がっ……)
帝人は身体中の熱が自分の顔に集まっていくのを感じると余計に意識してしまい更に顔を赤らめた。

『うーん……
 顔は少し赤いけど熱は無いみたいだね。
 良かった。』
そう言うといつも通りあの完璧な笑顔を帝人に向けた。
帝人は心の中で『誰のせいだと思ってるんですか!?』とツッコミを入れながら息を整え本題に入る事にした。



帝人は臨也に出してもらった紅茶のカップを手に持ち、紅茶に映ったもう一人の自分を見つめながら小さな声でおどおどと話し始めた。

『……あ、の……臨也さん…
 人は死んだら……どうなると思います…?』

『うーん……
 帝人くんらしくないねー。
 そんな質問。』
臨也は『ま、確かに興味深くはあるけど。』と、楽しそうに答えた。

『それでー
 帝人くんはどーして急にそんなことを思ったのかな?』

(あー………
今、僕………この人の人間観察の対象だなぁ…)
と、思いながら帝人は話を続けた。

『えっと……。
 …いや………。
 ちょっとそういう話を学校の授業でしまして…
 あっ!
 でも授業では“もし生まれ変わったら何になりたいか”と言うものでした…』

『へぇー……
 今ってそんな小学生みたいなことしてるんだ…』と、小声で言ってから帝人を見てニタニタと笑った。

『ちなみにさぁー
 帝人くんは、次に生まれ変わったら何になりたいって書いたのかな?
 あぁ…
 俺は勿論また人間になりたいよ。
 人間ほど素晴らしい生き物は居ないからねぇ』

ケタケタと笑っている臨也をよそに相変わらずのテンションの低さで帝人は答えた。


『……えっと。
 僕も臨也さんと同じことを書いたんです………。』


『へぇー…
 ちなみに理由は?』


『やっぱり聞くんですね…。
 わ、笑わないで下さいよ……
 絶対にっっ!!』

そんな帝人に
『大丈夫だよ!笑ったりなんてしないから!』
といかにも楽しそうに聞いてきた。


悔しいけど、ここまで来たら言うしかないっ!

帝人は臨也にもう一度笑わないように念を押しつから話し始めた。


『もし……生まれ変わったら、僕はまた……
 臨也さんとこうして…仲良く過ごしたいなぁ……
 って、思ったからです……』

帝人はそう言うとみるみるうちに顔を真っ赤にした。

(えっ!?
ちょっと……
なにこれ、なにこれっ……
なんなのこの可愛い生き物っっ
反則でしょ!!)

思わず臨也は帝人をぎゅうっと抱き締めた。
帝人は臨也の腕の中で必死に訴えた。
『ちょっ……い、ざやさんっ…!苦しいですっ!離してくださいっ!
 その……まだ…続きがあるんです!!』

臨也は“続き”を聞くために帝人を抱き締めた腕を少し緩めて真っ赤になり続けている帝人の顔をみた。

『あの……でも僕…思ったんです。
 もし…生まれ変わったとしても、
 僕は本当に“竜ヶ峰帝人”で臨也さんは本当に“折原臨也”なのかって……
 名前とか姿とか年齢とか……
 そう言う“自分”を示す形の物じゃなくて……
 その……性格…と言うか…心……と言うか…
 そう言う物が次に生まれ変わったときに今の僕であるかって……
 少し……不安になったんです……
 だって僕は…
 臨也さんのことが……す…好き………です。
 でもそれは……
 名前とか年齢とか“折原臨也”とか言う名前付けるものよりも……
 いじわるで変なところで不器用だけど…僕の事を大切に思ってくれる臨也さんに…
 臨也さんを……
 僕は心から好き…になったんです……
 だから…不安になったんですよ……
 生まれ変わっても…そこに本当に好きになった僕の臨也さんが居なかったら…
 て考えてしまうと……
 見た目は臨也さんでも中身は違う人だったり……
 僕だって……
 中身は僕なのに見た目が全然違っていたりしたら……
 僕たちはまた…
 もう一度こうして付き合っているんでしょうか……?』

この小さな幼い子供はどれだけこんな小さな問題で悩んだのだろうか…。
この小さな幼い子供はこんな最低な自分を本当に心から思ってくれている…。

臨也は自然と頬が緩んだ……。
臨也はいつもとは違う優しい笑みを浮かべて、帝人を手で触れた。


『帝人くん…
 俺は次に生まれ変わってもまた帝人くんを好きになるよ。
 どんな姿でも……勿論…ね……
 また、帝人くんと出会ってまた、帝人くんと恋に落ちる…
 見た目が帝人くんでも中身が帝人くんじゃなかったら、
 俺が心から愛した帝人くんを探すよ……。』

臨也そう言い終わる頃には帝人は顔をぐしゃぐしゃにして大きな美しい瞳から大粒の涙をボロボロとこぼしていた。
帝人は自分の頬にある臨也の手をとり愛しい名前を呼んだ。

『……っ……い…ざや……さん……
 臨也さん……
 好きです…
 好きです…
 愛……してますっ……
 ぼ、くも…
 次に生まれ変わったら…また……
 臨也さんを探さして…
 臨也を好きになって……
 臨也さんと恋に落ちますっっ!!』

臨也は帝人を優しく抱き締めた。
帝人も臨也の背中へと手を伸ばした。

『帝人くん…
 ありがとう。
 次も絶対に幸せにしてあげるから…』

『……は…い………。
 絶対に……また、幸せにして下さい…ね』






次…生まれ変わっても
自分は自分じゃないかもしれない…

でも
寂しくなんかない……
不安なんかじゃない……

だって、
僕たちはまた次も出会い、
また、自然と恋に落ちるのだから……
作品名:次もまた… 作家名:悠久