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信じたくない。

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そもそもの始まりは気の合わないお仕着せの相棒とのくだらないやり取りだった。
「相棒じゃないか、ほっとけないだろ」
「バカじゃないですか。ポイント0のあなたに心配される筋合いありませんよ」
「おま…っなぁ!」
「ご自分の心配をした方がいいんじゃないですか」
虎徹に取り上げられたドリンクを取り返して、バーナビーは踵を向けた。それに追いすがって虎徹が肩を掴んでくる。
「そんなもん栄養になりゃしないっての!」
「馬鹿じゃないですか、オジサン。これ、なんていうのか知ってます?え・い・よ・う・ドリンクって言うんですよ」
「わかってるよ!けどそういうこといってんじゃないだろ!」
まったく論理的でない返答を喚く虎徹にうんざりして、バーナビーは肩をつかんだ指を振りほどいた。
「何度も言いますけど、ほっといて下さい。あなたよりはよっぽど節度のある生活をしていますから」
「おまっ、おまえが俺の何を知ってるって言うんだよ!」
知らないし知るつもりもない。バーナビーは絶対零度の視線でだだをこねる(としか言いようのない)虎徹を黙らせた。
「あなたこそ、僕の何を知ってるって言うんだ」

「あらぁ、じゃあお互いよぉく知りあわないとねェ?」

突然の闖入者に、虎徹もバーナビーもぽかんと口を開けてドアの方を見た。
同じ表情をして自分を見る二人に、ネイサンはトレーニングの汗を拭きつつ艶やかに笑ってみせる。
「ちょうどよかった、ハンサムさんの歓迎会をしたかったのよォ。お子様たちには悪いけど、今日は大人組でどォお?」
「すみませんが…」
すかさず断わりの言葉を入れようとしたバーナビーを押しのけて、虎徹が大きな声を上げた。
「いいなぁ、それ!そーだよな、遅くなったけど歓迎してやるよ、バニーちゃん!なぁ?」
「ちょ…っ」
「それはボクも参加していいのかな?」
「あら、ミスターヒーロー、あったり前じゃない!あなたなしじゃヒーローの集まりにならないってもんよォ!」
「おーい!アントーニョ!今夜さぁ!」
仮にも主役と据えられた人物をそっちのけでトントンと話を進める輩に次々取り囲まれ、こめかみをひくひくと浮き立たせながらバーナビーは耐え忍んだ。


選ばれた場所はホテルの一角に陣取る、意外にも趣味のいい個室のある店だった。
「だってェ、ハンサムさんは顔出しヒーローだし、ヘンに注目されて邪魔が入るのも嫌じゃない?」
「うんうん、そーだよな。こいつが面倒なことしてるおかげで俺達の正体までバレたらかなわないよな」
「…僕の歓迎会なんですよね?」
なぜだか集まりの初めっから面倒扱いを受けた主役が、不本意を絵にかいた顔で確認した。
「もちろんだ。ようこそ、バーナビー!仲間が増えてうれしいよ!」
ミスターヒーローがグラスを掲げれば、
「頼りにしてるぜ、ニューフェイス」
「わかんないことがあったら手とり足とり教えてあげるワ、ウフン」
「ま、そういうこった」
次々とグラスがあげられる。
どうにも逃げられなくてバーナビーものろのろグラスを持ち上げると、待ちかねたようにグラスをカンカンと当てられた。乱暴な相棒の一打ちでグラスの中身がこぼれ、無理やり持ち上げた口の端がひきつるが、そんなことに頓着するような気遣いは連中にはない。
(いい迷惑だ)
要は騒ぎたいだけの連中の理由づけに祭り上げられたのだと、勝手に盛り上がる周りを冷めた目で見て、バーナビーはグラスを傾けた。と、いきなり後ろから首を締めあげられる。
「バニーちゃん、食ってるか?」
「…げほっ」
応えられるはずもない状況で尋ねられ、気管に入った酒に胸を焼かれながら睨みつければ、おせっかいで小うるさいばかりの相棒がテーブルを覗きこんでいた。
「ったく、ちゃんと食わないと体もたないって言ってんのに」
「あなたに関係…」
そもそもさっきまで向いで酒を煽っていたはずなのに、と視線をやればキースがグラス片手に演説を始めていた。
さては面倒になって逃げてきたなと思うそばから、隣の小さなスペースに尻をねじ込んでくる。
「ハイ、寄って寄って」
「ちょっ…何なんですかあなたは!」
文句をつけようと開いた口にセロリのスティックをねじ込まれ、また噎せた。
「んぐ、ぼ、僕を殺そうとしてるわけじゃ…」
「ん?」
並んだ料理を次々と皿に盛っていた虎徹は、隣で噎せているバーナビーを振り返って仕方ないなぁと言うように水の入ったグラスを取ってやった。
「しっかりしろよ、バニーちゃん」
誰のせいだ!と叫びかけたところに皿を突き出され、勢いを殺がれる。
「バニーちゃんだもんな、ニンジンのがよかったか?けどまあとりあえずもっと腹にたまるもん食っとけ。お前昼もドリンクだけだったろ」
イラッ
(余計なお世話だ、いらないおせっかいだとさんざん口を酸っぱくして訴えたというのに、この男は…!)
カッと頭に血が上りかけたが、すぐに冷めた。
「……もういいです」
虎徹があまりに善意丸出しで笑っているから、バーナビーは耐えられずに目を逸らした。面倒になって差し出された皿を受け取ったら、更にニヤケ顔を安売りされ、受け取った皿が重くなった気がした。


(仏心なんか出すんじゃなかった)
約4時間後、バーナビーはホテルの前で酔っ払いを肩にひっさげ、怒りに肩を震わせていた。
「残念だけどアタシ明日朝一で会議が入ってんのよーぉ」
本当に残念そうに、シナを作りながらも一番ケロッとしているネイサンが名残惜しそうに何度も振り返りながら店を出たのが0時を過ぎた頃。ようやくおひらきかと拷問に似た気分で時間をやり過ごしていたバーナビーが一緒に席を立とうとすると「主役がなに言ってんの」と押し戻された。ところを酔っ払って目が澱んできた虎徹に「まだかえさねぇぞー」と絡まれ、仕方なく座りなおしたのが間違いだった。
まずつぶれたのがキース。真顔でうざったらしく演説していた彼が突然沈黙したかと思ったらぶっ倒れた。驚くバーナビーにいつものこといつものことと笑って虎徹がキースの持っていた酒を呷った。人の健康をどうこういうくせに、わけがわからない。
比較的まともだと認識しているアントニオも陽気に酔っ払っているが、これは放っておいていいのか?と動揺している横で虎徹が膝に倒れ込んできた。
反射的に床に落としたが、それを見て、アントニオが苦笑して言った。
「そろそろおひらきだな」
嫌な予感しかしない。

かくしてキースを担いだアントニオに、虎徹を押し付けられて現在に至る。
(そりゃたしかに2人は無理だろうけど…)
相棒だからという理由で虎徹の方を任されたのも分かるし、正直それほど接点のないキースを任されるのも困っただろう。だが、
(オジサンの家だって知らないのは同じだ…!!)
初めて顔を売っていることを後悔した。
そうでなければ素知らぬふりで店に置いてきただろうに。いや、今からでもここに捨てていくかと虎徹を肩から下しかけたところ、「きゃーっ、バーナビー!」と女性の集団から声をかけられ、諦めた。習い性になった愛想笑いを振りまいて、虎徹を抱え直す。衆人環視の下、知人を捨てていくのはヒーローにふさわしい行為とは言えない。
たとえ内心で舌打ちしていたとしても。
「まったくあなたって人は迷惑の塊ですよ…!」
作品名:信じたくない。 作家名:篠山