あなたに愛される幸せ
彼は、呼吸と変わりなく言うから。
「好きやで。」
それだけで僕は嬉しくて溶けてしまいそうで。
「桜井、好きやで。」
後ろから優しく抱きしめられて、耳元で囁かれる。
わたあめのように甘くて、柔らかいことば。
どうしようもなく心地よくて、どうしようもなく嬉しい。
こんな僕を、好きだと言ってくれる。
この言葉だけで、生きていけると思った。
それがたとえ嘘だとしても。
「桜井、」
名を呼ばれる。
ふわりと頭を撫でられる。
それだけですべてがどうでもよくなる。
いつものように囁かれるその言葉は、感覚を狂わせてゆく。
マヒした頭でありがとうございますとだけつぶやけば、優しく抱きしめられた。
その言葉で、彼は嗤う。
誰にも気づかれないように、小さく小さく。
ああ、貴方に愛される僕は世界一の幸せ者です。
―アゼレア― あなたに愛される幸せ
作品名:あなたに愛される幸せ 作家名:如月ヒメリ