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あの人と僕とあの子。

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「君と杏里ちゃんは本当に仲が良いねぇ」
夕飯奢ってあげようと言われたので、連れてきてもらったファーストフード店。もごもごと欠食児童よろしくバーガーを頬張る帝人を、何が楽しいのかにこにこと眺めながら彼は言った。
「そう見えますか?」
「見える見える。こう言っちゃあ変かもしれないが、杏里ちゃんも君もお互い好き好きーって光線出てるよ」
「好き好きーって・・・・・」
妙に子供っぽい言葉に帝人はおかしくなって笑みを零す。その笑みを男は唯一機能している左目を眩しいものを見るように細めた。
「でも、仲良しに見えるなら嬉しいです。だって僕、園原さん好きですもん」
清楚で綺麗で頭も良くて運動もできる杏里を、帝人は憧れていると同時に大切にしたいひととして思っている。だから、他人から自分と杏里を見て仲良しだと、そう思ってもらえるのは帝人としては嬉しいことだった。
「杏里ちゃんも帝人ちゃんのこと好きだよ、きっと。おいちゃんが妬けちゃうぐらい」
「そう、ですかね」
「おやおや、俺が言う事信じてくれないのかい?」
言葉だけ拗ねて見せて笑みを刻んだまま見る大人に、帝人はぷうっと頬を膨らませる。
「そんなんじゃないです。―――ちゃんと信じてますよ、赤林さんのこと」
だって、
膨らんだ頬を悪戯に押す指を押し返して、帝人は視線を横に逸らしながらぼそりと呟いた。
「・・・・好きなひとの、言葉ですし」
インドア派の証である日に焼けない白い肌をふわりと彩る紅。羞恥か緊張か、僅かに震えた桜色の小さな唇に気付いてしまった大人はまいったというふうに片手で両目を覆った。
「・・・・・帝人ちゃん、大人をからかっちゃいけないよ」
「なっ、からかってません!」
「おいちゃん、ドキがムネムネしてきた。責任取って」
「それを言うなら胸がドキドキです!責任取ってって、何ですかそれ」
再びぷーっと膨らんだ頬に伸ばされる手。また悪戯されるのかと無意識に引いた身体よりも早く、辿りついた指が頬を微かに触れ、そのまま顎の曲線を撫ぜるように滑った。あまり見ない真剣な顔でこちらを見つめる大人に、ぞくり、と何かが背筋を貫くように通って、帝人の蒼い眸が無自覚に揺れた。
時間にして数秒か、しかし帝人には時が止まったように感じられたその瞬間は、へらりといつもの顔で笑った大人によって終止符が打たれる。
「ムラムラしてきた責任をホテルででも取ってくれたら、おいちゃん嬉しいなぁ」
おいちゃんか帝人ちゃんの部屋でもいいけどね。いっそ無邪気にそう言われ、時間差で帝人の顔は先ほどとは比じゃないくらい真っ赤になった。
「あ、赤林さんの馬鹿ああああ!!」
人で賑わうファーストフード店で、少女の怒声が響いた。








それから数日後。

「赤林さんと竜ヶ峰さんは仲が良いですよね」
「ぶふッ」
お昼時間、屋上で二人仲良く――正臣は委員会の集まりがあるとクラスメートに連れられて行った――並んでお弁当を食べている時に、ふと杏里に言われ帝人は思わず噎せた。
「だ、大丈夫ですか?すみません、食事中に変な事言って」
「げほっ、う、ううん、園原さんは、悪くない、よ」
悪いのは、その台詞で連鎖的に数日前のことを思い出し噎せさせるようなことをさせたあの大人が悪い。
「ふぅ、鼻にご飯粒入るとこだった・・・・。ごめんね、園原さん驚かせて」
「そんな、私こそ」
「ちょっと前に似たようなこと赤林さんにも聞かれたんだ。それで、思わず」
「噎せるような事でもされたんですか?」
「え゛?!」
「…………」
「ああああ違う違う違います!ただちょっとびっくりしただけだよ!!だから罪歌出しちゃだめえええ!!」
今にも赤林の首を取りに行きそうだった杏里を必死で止める。帝人に関しては意外と激情家な杏里なのだ。
「もし、無体な事されたらいつでも言って下さいね。狩ってきますから」
「ああうん、ありがとう園原さん・・・・・」
いっぱしのヤーさん相手にやれないことも無い大切な友人の頼りになるけど、ちょっと怖い台詞に帝人は空笑いを返した。他にどう言えと。
色んな意味でドキドキしている胸を抑えながら、帝人は数日前のことを掻い摘んで話す。
「園原さんと僕、本当に仲が良いねって言われたんだ」
「え・・・・」
「お互い好き好きーって光線が出てるって言われて、僕はそうかもしれないけど、園原さんも出してくれてるなら嬉しい…なぁ、って」
帝人の言葉尻を奪ったのは、真っ赤になった杏里の顔だった。まさしく、あの時の帝人ぐらいに。
「・・・・」
「・・・・えーと」
帝人も釣られて赤くなってしまい、お互いお見合い状態でもじもじとしてしまう。女同士で何をやってるんだー!と幼馴染が居たらそう突っ込みいれてくれるのだろうが、あいにくその幼馴染も今は不在だ。なので奇妙な空気が出来上がってしまった。
「……それでその、赤林さんに言われて、僕、嬉しいなぁって、思ったんだけど」
「……私も」
「え?」
赤い顔で、しかし柔らかく綺麗に微笑んだ杏里が帝人を真っ直ぐに見つめていた。
「私も、帝人さん大好きですから、嬉しいです」
ぱちりと瞬いた帝人はその時初めて杏里に名前で呼ばれたのだと気付いて、そして言葉を漸く飲み込んで、あの時と同じように時間差でぼんっと顔を爆発させた。





「赤林さんには負けません」
「おいちゃんにも譲れないものはあるんだよねェ」
「え?え?」

作品名:あの人と僕とあの子。 作家名:いの