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2011千聖おたおめSS

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「ち・さ」

「千聖君」―予測変換で出た。

「た」

「誕生日」―また予測変換で出た。

「お・め」

「おめでとう」―またまた予測変換で出た。

一瞬で出来上がった、「千聖君、誕生日おめでとう」の文字。

予測変換の機能って……便利といえば便利なんだけど、なんだか味気ないような気もする。
その味気なさを埋めるために、誕生日ケーキやクラッカーの絵文字で彩る。
あ、このクマちゃんも足しておこう。


Happy Birthday ~Manami side~


パチン、と携帯電話を閉じて、「ふぅ」と息を吐く。
「彼氏」の誕生日になった瞬間、メールだけってのもなんだか味気ない気もするのだが、お互い明日は学校。
教師である自分と、大学生である彼。
これが金曜日だったりしたら、いや、せめて土曜日だったら、次の日一緒にいられるのにという落胆の入ったため息。

千聖君の誕生日に、千聖君が一番初めに会う相手は、誰なんだろう。
ご家族の方?
もしかして天十郎君だったりして。
「千聖君の誕生日に、千聖君が一番初めに会う相手」…
今、この状況でこんなこと言っても仕方ないのだろうけど、
それは「私」ならいいのに。


「ピンポーン」


しんとした部屋に響くチャイムの音にびくりとする。
普段鳴らないはずの時間に鳴る玄関チャイムって、どうしてこう人をドキリとさせるんだろう。

でも今日は…?

一抹の期待を抱えつつ、ミラーから外を見る。
外にいたのはやはり千聖君だった。

チェーンをはずし、ドアの隙間から顔を出した。
「ち、千聖くん!?どうしたの!?」

「どうしたの、って…今日は俺の誕生日だろう。
だから、お前のところに来た。それだけだ」

「それだけ」って…。そんなアッサリと。

そういえば、私、今、パジャマ姿!
いや、パジャマ姿は一度夏合宿で見せたからいいとして…
…そう!!顔!!
私の顔!!すっぴん!!!!
あ、それも見られたことあるんだった……。

「今日は、っていうか、…うん、さっき、『今日』になったばかりだけど…。
あ、そうそう!メール送ったよ」

「あぁ、見た」

さっきから全然動揺したそぶりもなく、涼しげな顔でまっすぐこっちを見る千聖君。
さすが聖帝で女の子からきゃあきゃあ言われていただけある、整った顔に見つめられて、動揺しない方がおかしい。「彼女」の立場であるにも関わらず。

「それにしても…じゃ、なんで、急に?」

「なんで、とは…なんだ?
今日は俺の誕生日だろう。そんなに日にお前と過ごしたいから、というのは理由にならないのか?」

『お前と過ごしたい』

どうしてこの人は、こうもサラリと
私が今一番ほしい言葉をくれるのだろう。

頬が真っ赤になるのが自分でも判った。

「あの…えっと…と、とりあえず、こんなところで話していると近所迷惑になるし、
…入る?」

「ああ、そうだな」

ばたん。

「あの、千聖くん、せっかく来てもらって悪いんだけど……」
玄関を閉めて、はたと気づいた。
千聖君がわざわざ来たってことは、私に会いに来たってことで、
こんな特別な日だったら、その「会う」ってことも「特別な何か」があって。

「朝早く家を出ないといけなくて…。」

言葉を続ける。
きっと、千聖君は…触れるとか、それ以上のものが今ほしい場合、私は明日の予定とどう折り合いをつけたらいいか、きっとわからない。
「牽制」という言葉で片づければおこがましいのだろうけど。

「学校があるのは俺もだ。大丈夫だ。朝には俺も出る。」

「そっか…そうだよね。で…来てくれたのは嬉しいけど、多分、何もしてあげられないというか。」

くしゃ、と髪を握る。
その一言が、自分でも動揺している。

すると千聖君は手を伸ばし、私の頭をなでた。
大きい手に似あわない、優しい動き。
安心させるような、それでいてくすぐったく、どこかに意味を見出そうとしてしまう。

「気にするな。寝たかったらすぐにでも寝ればいい。」
次の瞬間、聞えるのか聞えないのかわからないくらいの小さな声で、こう言った。
「横で寝顔を見ているだけで、いい。」

あぁ、分かった。
牽制はきっと、自分にしていたものだったんだ。

明日仕事があるだとか、千聖君だって学校があるだとか、平日だから泊っていけないだとか、なんだかんだ理由をつけて気持ちを離そうと思っても、誕生日という「トクベツ」には逃れられない。

明日に疲れが残ってもいいや。
「手加減してね」も言わない。
「手加減しなくてもいいよ」までは怖くて言えないけど。

「誕生日おめでとう」

千聖君の目を見て、言いたかった一言をはっきりと言った。
作品名:2011千聖おたおめSS 作家名:みろ