短編<1>
力の限り叫んだ。
周りの事なんて見えていなかった。
正確にいえば、周りなんてみる気はなかった。
ただ叫ばずにはいられなかったのだ。
そして私は気付いたら走り出していた。
走らずにいられなかった、その場から逃げ出したかった。
周りの人間が一斉に私を見る。
周りの人間が一斉に私を指さす。
周りの人間が一斉に私を嘲笑う。
何が悪いの!?何が違うの!?何で笑うの!?
頭に浮かんだ簡単な疑問でさえ、考えることを放棄した。
ただ走った。
ただ走った。
雨がぽつぽつと降ってきたがそんな事は気にしなかった。
今は遠くへ、ただ遠くへ逃げたかった。