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堕落者11

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「君ってあたまがいいのかい?わるいのかい?」
 と、とある一日、跡部はいつもと変わらず素直だ。
「良くも悪くも無いと思いたいけど」
「なんだそれ」
 私たちの手元には、完成されたあいうえお表が二枚ある。先生は教室の前で、ホワイトボードに「か」の字を書き始めていた。「こくご」や「さんすう」の時間は、頭を使わないただの書き写しの時間と言って、差し支え無い。学習する事は小学一年程度で、数分あれば出来る。それは英才教育を受けている跡部も同じだったが、他の子は決してそうでは無い。
「ぼくは、りんはあたまいいと思うぞ」
「ありがとう」
「そっけないぞ」
 相手が相手、とても素直な奴なので、気兼ねない返事が多くなった。
「それにしても、りん、今日もぼくのさそいをことわる気かい」
「うん」
「いっしょにごはんを食べたいっていうだけなのに、君はいがいと頑固だな」
 跡部は口を尖らせて言う。
 跡部は私の思っていた通り、昼食は外で取っているらしい。予想するところ、高級レストランなのだろう。ここ最近、それにむーちゃんは毎回付き合わされていて、跡部と遊ぶようになってから私も誘われるようになった。
「何回も言ってるけど、うちはうちで給食代払って通ってるから、給食食べなかったら損なの」
 これは一種の嘘だが、建前上そうなっているので、私にはその通り行動する必要がある。
「そんなことどうでもいいじゃないか」
「それも聞き飽きた」
「はらわなければいいじゃないか」
「もう払っちゃてるし」
「前の月だって、そう言ってたじゃないか」
「言ってたね。きっと来月も払うよ」
 彼此一ヶ月程、彼に食事を誘われている。このしつこさは、そのぐらい私を慕ってくれているという事だろう。それは確かにとても嬉しくて、光栄な事だ。
「何で払うんだい」
「お父さんが払ってくれてるんだよ」
彼の誘いを断る事というのは、私が鈴をそう呼ぶようなもの。私は跡部に、私という人間を提示しているに過ぎない。
もしここで私が跡部の誘いを受け入れてしまえば、その先、私は怠惰からそれを断る事をしなくなるだろう。そして私が彼と「お友達」でいる間、ずっと彼の家に私の昼食代を払わせるのかもしれない。それは私ではなかった。だからといって、彼の家に奢らせずに済むとなっても、跡部の通うような店に足を運ぶようでは、もはや私では無い。そもそも、本来あった私の立場からすれば、いくら交友のためとはいえ、必要以上の出費なんてもってのほかなのだ。
 跡部はそれきり黙ってしまった。私を放っておいて、一人考え始めたようだ。こうなってはむーちゃんが話しかけても答えない。それから私は教室遊び中、紙の裏に落書きをして、提出する際には消しゴムで消しておいた。教室遊びが終わると、跡部は身支度を整えて、挨拶を交わす程度に教室を出て行った。
 食事からむーちゃんと帰ってくると、考えはもう付いたのか、笑みを浮かべてこう言った。
「りん、今日あそびに行ってもいいかい?」
 食事の誘いは何回もあった。しかし、そういった頼みは今まで一度も無かったので、私は気の抜けた返事をする。
「どうなんだい」
「うーんと、親に聞いてみないと分かんないよ」
 私に問題が無ければ、鈴にも無い。それでも私には、そう言うのが妥当だった。
「そうかい。君って、親に決めてもらわないといけないんだな」
 素直な彼は、私に対していつでも好意的に笑ってくれていたが、今回ばかりは、その表情が苦々しい。彼が、食事の誘いの延長線上にそう言っている事が、私には分かった。
「そうだよ。親に決めてもらわなきゃ駄目だよ」
私が私であるために、私は彼の怒りを買った。
作品名:堕落者11 作家名:直美