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星のラブレター

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「すんまへん、坊。ちょっと出てきます!」
「……ハァ!? ちょ、おい、志摩!!」
 それまでより少しだけ遅く届いた返信メールを開くなり席を立ち、同室の坊へ声を掛ける。
 坊からの返事を聞く前に、椅子に掛けてあったパーカーを手に、部屋を飛び出す。
 寮監に見つからないよう、入寮初日に先輩に教えてもらった抜け道を使い建物から出て、すぐ側にある自転車置き場から誰の物か分からないけど一台失敬。
「よっしゃ。今行くえ」
 小さく、けれど強く呟き、気合を入れてペダルを踏んだ。
 彼が寝起きしている古い寮まで、自転車ならそう時間はかからない。
 きっと外に出て待っていてくれるだろうから、湯冷めしないように早くそこに辿り着かなければ。

 秋の空気が冷たく頬を撫で、遠くで鈴虫が鳴いている。
 薄い空には、真ん丸のお月さんが、ひとつ。
 自転車ペダルを漕ぐたび、景色が後ろへ流れていく。

 ただ会って伝えたいんだ。


「お月さん綺麗やで、って」


 彼はきっと、この言葉の意味を知らない。
 この言葉が、『I love you』と同じ意味を持つのだということを。
作品名:星のラブレター 作家名:葛木かさね