彼をスノボに連れてって
呼吸を整える。READY。視界を整える。GET SET。風は向かい風。COUNT3。白が細かく空気に立つ。COUNT2。ここは雲よりはるか高い場所。COUNT1。
87.5度の斜面という名の絶壁は、自分で決めた『0』と同時に角度を変える、頭は前へ、腰も前へ。一気にアドレナリンが血流を回る。
ゴーグルはあっという間に、拡散する結晶がぶつかってくるけど、それはパウダースノーでしかなくて、細かい隙間ははっきりと目に焼きつけながら、踏みしめた相棒に身を任せる。
Okay、Baby!
厚さ2センチは、車より速く、ロッキーのふもとに小さな雪崩を起こしていく。コブがあれば宙に浮き、障害物は回旋し、降下はそのまま高みになって、速く速くもっと速く!!
ふと振り返ると、自分が造った軌跡が頂上からS字を描いていた、真っ白なキャンバスに刻み込まれた一銭。俺は満足げに笑って、やがて止まる。
あっと言う間の、勝利の匂いを、ふかふかの雪に抱きしめられながら。
作品名:彼をスノボに連れてって 作家名:かつみあおい