caramel
第2話
コンコン
「お邪魔します」
「あら、おかえりなさいアルフォンス君。」
アルが嬉しそうにしてるのが伝わる。
アルはいつだって笑顔で迎え入れてくれる中尉が大好きだ。
その気持ちは俺だって同じ・・・
でもアルとは大きく違う。俺は中尉が大好きと同じ分、辛い…
「やぁアルフォンス。ところで鋼のは何処だ」
久しぶりに聞いた声に俺は思わずドキッとしたが、
それどころではない。
アイツだいぶキレてるな…
思わず気配を消したが、その努力も空しく。
「兄さんはここです。」
鎧の腹部をカッパリと開けられ、
皆さんにしっかりと姿を捉えられてしまった。
「どっどうも…」
皆さんの呆けた顔が面白い…ハハ・・ハ
もう帰りたい・・・・
大佐の執務室に移動して、
今俺は大佐の目の前に立たされている。
いつものように大佐に報告書…いつもよりは量が多いそれを渡し、
資料室にでも行こうとしたが、許されなかった。
そこに立っていろと目線もよこさず温度の無い声で言われれば、いくら俺でも反抗しない。
「(…怒ってるよなそりゃ)」
もう何分こうして立ってるんだ…と思ったとき、
大佐が報告書を読み終えて、やっと顔を上げこっちを見た。
それがなんだか少し嬉しかったのだが、本当に束の間だった。
「では、何故こんなに連絡を怠ったか聞かせてもらおうか。」
「悪かったよ。」
すごく怒ってる。
口元は笑っているが、目が笑ってない。
「私は謝ってほしいのではないのだが。」
「・・・・・・・。」
「理由を言いたまえ。」
「良い情報が何個かあったし、いっきに確かめようと思ったんだよ。」
半分は言い訳だが、半分は本当だ。
嘘は言っていない。
「電話ぐらいは出来たと思うが?」
「・・・・・。」
「もういい。」
!!
溜息とともに呟かれた言葉にハッとする。
こいつに見捨てられたら終わりだ。
俺の想いとかじゃなく、アルのために俺はまだ国家錬金術師はやめられない。
アルの体を戻すまでは絶対に。
「待ってくれよ!!」
「なんだ。」
「本当に…悪かったよ…。これからは気をつける。」
「だからもういいと言っている。」
「見捨てないでくれっ!!!」
怖かった。
いつまでも温度を感じない声が。
見捨てられて先が見えなくなるのが。
体が震えてるのが分かったが、拳を握ってなんとか止めた。
「なんて顔をしてるんだ。」
俺が下を向いて答えを待っていると、
イスに座っていたはずの大佐が傍に来てた。
視界の端に大佐の靴が入ってきて思わず顔を上げたら・・・・
困ったような顔で大佐が俺を見てた。
「もう許してやると言ったんだ。」
「へ?」
「だからそんな顔はするんじゃない。休憩しよう。」
大佐は俺の頭に手を置いたかと思うとスタスタと執務室を出て行った。
俺は現状把握が出来ずに固まった。
とりあえず許してもらえたのか?
ていうか!!
今…俺、大佐に
「・・・・・・・撫で・・られた?」
きっと今、俺の顔は赤くなってる。
さっきまでは不安と恐怖で震えてたのに。
そっと自分の手で頭を触ったら、すごく温かかった。
執務室の扉の外から早くしないかと声がかかった。
返事をした俺の声は完全に裏返った。