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日照ラテ粉
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novelistID. 26877
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続合鍵問題レンさん編

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「・・・・」
「・・・・」
「これ・・・お返しします。」
レンは机の上に合鍵を置き、向かいに座るジグのほうへゆっくり手で滑らせる。
「わざわざ私の部屋まで来ていただいて、すみませんでした。
 それと、昨日のこと・・・本当に、ごめんなさい」
「いや、レンは・・・悪くない」
本部のレンの自室まで呼ばれ、ジグはレンと向かい合って話をしていた。
椅子に座ってからレンが話を始めるまで、随分と長い沈黙があったが。
「俺が、レンにも鍵を渡していたのを忘れていたのが悪かった。
 俺こそ謝るべきだ、その・・・・本当に、すまなかった」
「ファズさんにも、鍵を渡していたのですね」
「そうだ」
「・・・わかりました。
 たぶん、どちらが悪いとかではありません・・・・もう、お互いに謝るのは止めにしましょう?」
「・・・わかった」
「・・・・・・」
また部屋が沈黙に支配される。

――――ため息をつくことさえためらわれる。
レンに知られるということで、こんなにも気まずい気持ちになるとは思いもしなかった。
・・・大切な友人に、こんな表情をさせてしまうなんて。

「・・・・・ジグさんは、ファズさんと付き合っているのですね?」
「!!・・・・
 ・・・・」
突然質問された。答えようとして二回、失敗した。口を開き、自分では返事をしたつもりだったが、声になっていなかった。
「・・・・ああ」
やっと返事ができた。
たったこれだけ口にするのに、なぜ苦労するんだ自分は・・・・・
「そうですか・・・・」
レンは目を伏せて言う。
「・・・ショックです。ジグさんに恋人がいるということも、相手が男性だということも。
 でもそれは、私が口をはさめることではないんですよね・・・・」
「レン・・・」
「引き止めてしまってすみませんでした。鍵を返すだけって言ったのに。
 もう、戻っていただいてけっこうですよ」
「ああ」うながされてジグは立ち上がり、卓の上の鍵を拾いあげてきびすを返す。
「残念です、ジグさん」
その背中に声がかけられた。ジグは足を止めて、振り返る。
「私は、残念だと思っています。相手がファズさんだからというのではなく・・・・
 ジグさんほどの殿方なら、やはり女性とお付き合いして、家庭を持つべきだと思うのです」
「俺は・・・・そんなことには向かないと思う」
「いいえ、」レンは首を横に振る。
「そんなわけはありません。ジグさんならきっと、立派なお父さんになるはずです」
「レン。
 俺は本当にそんな奴じゃない」
レンに再び背を向けて言う。
「今だって・・・お前の言うことが正しいってわかってるのに、
 ひとつもその通りにできない・・・・」
「ジグさん・・・」
悲しげに呼びかけるレンを振り返らずに、扉へ歩き出す。


ファズの部屋に向かうわずかな距離を、歩く足取りは重かった。

女性と付き合うべき。家庭を持つべき。
言葉が頭の中をぐるぐると回っている。
自分がそうするということは考えられない、なのにそのことが胸に突き刺さって消えない。
レンが自分に向けた言葉は、そのままファズにもあてはまるからだ。
自分にとっては現実味がない話だったが、ファズのことなら想像できる。
あいつはきっと、いい父親になるだろう。
―――その幸せを、自分が奪うことになるのだとしたら。
「・・・・」
ずっとあいつの側にいたいなんて、思ってはいけないのかもしれない。
いつか、離れるときがくるのかもしれない。

だけど、できるならどうか、それはもう少し後のことであってほしい。
どうか一秒でも長く。
ファズの部屋の前までたどり着き、痛む胸をおさえながら部屋の扉に手をかける。