家出少女を保護しました
鼻歌を歌いながら池袋の道を歩く。
この後は気分もいいことだし、露西亜寿司で遅めの夕食をとるのもいいかもしれない。
そんな事を考えつつ歩いていると、ギィギィと静かにブランコをこぐ音が聞こえてきた。
(ん?すぐそこは公園だからブランコの音は違和感ないけど...22時、か。どこかのカラーがたむろってるのか?)
面倒だなぁと思いつつも新しい情報がなにか入るかもしれないと、音を建てずに公園内に入っていく。
だが、予想外に反してブランコに座っていたのは見覚えのある少女だった。
「みっかどちゃ~ん、こんばんは。こんな遅くにこんなところで何やってるの?危険な狼が蔓延ってるんだから危ないよ?」
「いざや...さん?」
「うん。素敵で無敵な折原臨也だよ。ほら、送ってあげるからおいで?今頃静ちゃん帝人ちゃん探して暴れまくってるんじゃない?」
静ちゃんの妹である帝人ちゃんに優しく手を差し出す。天敵の妹だからといって、貶めたり利用したいとは一切思わない。あの化け物の妹とは到底思えないほど帝人ちゃんは愛しくてしかたがないのだから。
初めてあった時に興味を覚え、故意にかかわって‘帝人‘自身を知るにつれてどんどん惹かれてゆき、今ではぬけられない程に愛してしまったのだ。
そんな存在である帝人ちゃんが治安の悪い場所で、こんなに遅い時間...自分が純粋に相手を心配できる人間だったのかと驚き反面である。
「帰らないです!僕...もう静兄なんて...っ!...ねぇ、臨也さんは静兄とは喧嘩するけど、僕にはいつでも優しいし助けてくれますよね?だから...しばらく僕を臨也さんのお家にとめてくださいっ!!」
「み、帝人ちゃん?!!」
涙をさっと拭って勢いよくブランコから立ち上がると、俺のコートを掴んで上目使いにおねだり攻撃をはじめた。
(こ、これは何のフラグだ?!!愛している帝人ちゃんのうるうる上目使いに、お泊りイベント?!!神様ありがとうっ!!何かわからないけど、帝人ちゃんを怒らせた静ちゃんありがとうっ!!!)
表面には一切出さずに、ノンブレスで心の中で歓喜をあらわす。
「ダメ...ですか?」
「はぁ、こうさ~ん。帝人ちゃんには敵わないな。おいで。その後ろにある鞄が荷物なんでしょう?そっちも貸して」
「ありがとうございますっ!!!」
満面の笑みでお礼を言ったあと、すみませんと家出にはちょっと小さめの差し出された鞄をを受けとる。
「どういたしまして。いつまでも居ていいからね。ところで、ご飯は食べた?」
「甘えちゃいますね。えーっと、ごはんはまだです。学校終わってから荷物まとめてすぐ出てきたので...」
「そっか、じゃ夕飯食べて帰ろうよ。おいしいレストラン知ってるんだ。パスタは嫌いじゃないよね?」
やっぱり露西亜寿司だと静ちゃんが来るかもしれないから、女性に人気のパスタの専門店にしよう。あそこは雰囲気もわりといいし、何より絶対に静ちゃんが近づかないからね。
「大好きですけど...そこまでお金もっていなくて...」
「あはは。大丈夫!帝人ちゃんはもっと大人に甘えるべきだよ?こういうのは男が払わないとね」
ウィンク一つ茶化していうと、下がっていた眉が上がっていつもの可愛い笑顔にかわった。
うん、やっぱり帝人ちゃんは笑った顔が一番いいね!
「ふふふ、ありがとうございます。ごちそうになっちゃいますね」
「どうぞ、お姫様」
大好きな帝人ちゃんの小さな手を繫ぎ、目的の場所へと足を運ばせる。
今なら大嫌いな静ちゃんにありがとうっ!!と声を大にして言えるかもしれない____
---おまけ----
「ところで何で家出なんかしたの?静ちゃんに何か大切なモノでも壊されちゃった?」
パスタを巻きながら思い出したように問いかけると、帝人ちゃんは怒りがまたフツフツと湧いてきたのか、ブルブル震える手でフォークを握りしめた。
「聞いてくださいっ!酷いんですよ!!幽兄が買ってきてくれた一日限定10食のふわとろプリン!帰ってから食べようと楽しみにしてたのに、からがごみ箱にあったんです!それもイチゴ味ですよっ!!!」
もう許してなんてあげないんですっ!!と涙目になりつつ力説する帝人ちゃんを目のあたりにして、帝人ちゃんには例のプリンを買ってあげなきゃいけないと、変な使命感が湧いてきた。
波江に明日の出勤時に必ず持ってくるように後でメールをしようと静かに誓うのであった。
作品名:家出少女を保護しました 作家名:雲月 ルカ