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泣きそうな顔をしていた

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わたしのおねえちゃんはすごくすごくしっかりしていて、わたしの“しっかり”のぶんまで、お腹のなかで持っていったんじゃあないかな、と思わずにいられません。だっておねえちゃんは、ちゃんと朝は7時に起きるし、ごはんもきちんと食べるし、宿題だって忘れません。わたしはよく寝坊をしちゃうし、だからごはんも食べ損ねちゃうし、かばんをあけたら昨日やったはずのプリントを忘れていたりします。
わたしはほんとうにどじなので、そのプリントが今日の授業で使うことを知ってますます落ち込むと、見かねたおねえちゃんが、こっそり貸してくれたりします。わたしとおねえちゃんはクラスが違うので、それはできることです。そうしたらギリギリに教室に入ってきたこなちゃんが目を光らせてそのプリントを写し始めたりするので、またおねえちゃんは怒ります。
おねえちゃんは、きびしい人だけど、とてもやさしい人です。それはとくにこなちゃんに対してよくあらわれていて、おねえちゃんはよくこなちゃんに怒るけれど最終的に甘いのです。今だって、そうです。

「あんたねぇ、今日だけだからね!」
「そういって見せてくれるかがみ萌え〜」
「ふざけんなっ!」

こなちゃんと言い合っているおねえちゃんはなんだかすごく楽しそうで、顔や声には出さないけれど、わたしにはわかります。なんだかんだ、おねえちゃんはこなちゃんのことが好きなので、こういう関係でありたいと心の奥のそこのほうでは願っているのでしょう。もしこなちゃんが急にしっかりして、宿題とか欠かさずやってきて、おねえちゃんの手を借りなくなったらおねえちゃんはきっとさみしくなるんでしょう。

「つかさ?どしたの?」

どれだけぼけっとしていたんでしょう。おねえちゃんの心配そうな顔が目の前にあってびっくりしちゃいました。同じ血をわけているけれど、一般的な二卵生なので顔はあんまり似ていません。おねえちゃんはきれいな顔をしています。目がきりっとしていて、鼻もすっととおっている。わたしはなんだか眠そうな顔だと、よく言われるし鼻もなんだかぺちゃっとしています。

「ううん、なんでもないよっ、それよりおねえちゃんもう1限はじまっちゃうよ!」
「あ、やばっ、とにかくこなた!あんたほんといい加減にしないとだめよ!」


おねえちゃんはこなちゃんを指さしながら、慌ただしくわたしたちの教室を出て行きました。もっと素直になったらいいのになあと思わずにはいられないのですけど、そうなったらそれはまたおねえちゃんと違う気もするので、複雑です。

「ねぇつかさ」
「なあに」
「かがみはやさしいねぇ」

わたしは、困ったようにうなずくしかできませんでした。だって、おねえちゃんのことは自分が一番よく知っていればいいやって思ってたのに、こなちゃんはおねえちゃんのことをちゃんとわかっていたんですから。このきもちはなんなんでしょう。
おえねちゃんが好かれるのはうれしいけれど、でもおねえちゃんがどこかにいっちゃうのも、いやなんです。わたしたちは決して切れることのないもので繋がっているけれど、それにどれだけの意味があるんでしょう。どれだけの強さがあるんでしょう。なんだか急にさみしくなってしまって、びっくりしました。1限がはじまるチャイムがなります。わたしは席について、おねえちゃんの端正な字が並んでいるプリントをじっと眺めます。じっと、じっと。そうしてそれを机にしまいます。黒井先生が宿題のチェックにまわってきました。

「柊、宿題はどうした?」
「忘れちゃい ました 」

机のなかのプリントを握ったら、くしゃりと音がなりました。わたしにしか、聞こえない音でした。
作品名:泣きそうな顔をしていた 作家名:萩子