また、見ないふりをする
例え目を背けても仕方のない事だろう
僕の人生で最大最悪の悪友が結婚するらしい。大した驚きも感想もないのは、このありふれた「結婚します」の葉書が何枚目だかわからないからだ。そして僕の住所を綴る文字が繊細できれいだからだ。あの男の文字じゃない。きっとまたいつもの夫婦漫才なのだろう、今度は本物の婚姻届が造られてしまったんだろうか、彼女から逃げる為と聞いた事のない外国へ進学したのにもう追いつかれてしまったんだな。もう法的には叶う年齢になってしまったから今頃きっと照れ隠しに真っ青になっているんだろうなあ。何が気に食わないのかしらないけれど、いい加減観念してしまえばいいのに。
そうすれば僕も、毎回文字を確認するのに勇気を振り絞らずにすむのに。
(最後に見たあいつの物言いたげな瞳が忘れられない)
【また、見ないふりをする】
作品名:また、見ないふりをする 作家名:コウジ