だって別人みたい
「生憎だがお前のような馬鹿と違って文明人なもんでな、衣食住の面からして無理だ」
いいながら、熊と取っ組みあってそうなごつい手にペンを持たせ、下半身を隠した布一枚で充分そうな焦げた体に服を通し、飯の事だけ考えてそうな軽そうな頭ですらすらと問題を解いている、目の前の野性児。数秒手を止めたからざまあみろと思って顔をあげたら、視線が重なってつい引け腰になった。
そして意地悪そうに引き上げられる左の口端を見咎めて。しまったと思ってもあとのまつり。
「そんなに俺の眼鏡姿は見惚れちまうか?」
不釣り合いだと思っただけだよ、ばか!
【だって別人みたい】