夏のフーガ
1ゲーム目~いざ出陣~
4月―。
出会いの季節でもあれば、別れの季節でもある4月。
今年高校一年生になった伊藤 栞は、入学式の準備をしていた。
『~♪ 今日からこぉちゃんと同じ高校にいけるー!!』
栞が今日から通う学校は、県立西浦高校。
なかなかのマンモス校であり、私服校。
栞はあまり制服というものが好きじゃないのもあり、
西浦に通えることを楽しみにしていた。
栞が今着ているのは、制服っぽいものである。
さすがに入学式なので、いきなり私服というわけにもいかないと思ったからだ。
きちっとしたカッターシャツに、家にあった赤色のネクタイ。
親戚の人からもらった県内のブレザーに、オーソドックスな紺色のチェックの
スカート、そして紺のハイソックスといった感じ。
『んー。こんなもんかな?』
自分と同じ背丈ぐらいの鏡を見ながら、くるっとその場で一回転してみる。
『よし!服装おっけー! そろそろ行かなきゃ!』
机の上にあったカバンをひっつかんで階段を下りる。
リビングに顔を出し、支度中の母に声をかける。
ちなみに父はすでに仕事。 本当は入学式に2人できてくれるはずだったが、
仕事がいそがしいらしく断念。
だから入学式には母親のみがくるのだ。
『お母さーん!私そろそろ時間だから先いくねー!』
「はーい!気を付けてね~! あとでちゃんと行くからー!」
真新しいローファーを履いてスキップ気味に玄関をでる。
『んー!!! 今日から西浦にかよえるぞー!!』
栞は鼻歌を歌いながら、西浦にむかった。