蚊帳の外
「こういう時にそんなこと、あまり言われたことないな。姫路さんくらいだよ」
「私、友達を殴ったことないんです。あんなにしっかり怒った事も、…小さい頃はあったんですけど、次の日からその友達は別のグループにいました。きっかけももう覚えてません、ただ、何度か、何度も、そうして怯えるようになりました。相手に合わせるように、譲り合うように、それが社会なんだって」
「違うよ、姫路さんは優しいから相手を傷つけたら相手以上に姫路さんが傷ついちゃう。そんなことしなくていいんだよ、そりゃ僕だって最初少しは遠慮してたけど馬鹿雄二と女の子なんて一緒にしちゃあいけないよ」
「…こわくは、なかったですか。その最初を、渡すのは」
ああ私、きっとまた困らせてる。明久君なら素敵な言葉をくれるから、心を軽くしてくれるから、私は甘えてるんだ、期待を、きっとしてしまってるんだ、ごめんなさい。優しいのはあなたなのに。
やさしいひとは振り向いて、何でもないことの様に笑った。
「僕の言葉で傷ついて立ち上がらないような奴だったら、こんなに傍にいないよ」
ああ、男の子ってずるいなあ。