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日照ラテ粉
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novelistID. 26877
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続合鍵問題ケイトン編

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こんこん、とドアをノックする音が聞こえた。
誰だと訊いても返事が無い。中からドアを開けてやると、外に立っていたのはケイトンだった。
「えーと、今、部屋にはあなたひとり?」
「・・・ああ」
「お邪魔してもいいかしら?」
・・・ケイトンに見られたのか。昨夜の自分とファズの姿。
となれば、話さなければいけないこともある。気分は相当重いが・・・
ジグはケイトンを部屋へ招き入れた。


「昨日はびっくりしちゃったわよ。あなたがあの人の恋人だったなんて、私、全然知らなかった。
 ねえ、二人はいつから付き合ってるの?何がきっかけだったの?
 どっちが先に好きだって言ったの?二人の関係は・・・
 どうしたの?ぽかんとしちゃって」
「いや・・・驚いた」
「どうして??」
「お前が、俺のことを訊いてくるなんて」
ケイトンが二人でいるときに話すことといったら、愚痴話だったり、かつての自慢話だったりで、とにかく自分の話しかしない奴だと思っていたのだ。
「あら。だって私、女だもの。恋愛話は大好物に決まっているでしょう」
うきうきした様子で身体を揺らしながらケイトンは答える。

少し前までは、ケイトンの姿を見るたびに、ノーマに味わされた苦々しい気持ちを思い出して、複雑な気分になっていたが、こうしてケイトンの無邪気な笑顔と何度も向き合っているうちに、いつのまにかそのような感覚も忘れていった。
目の前にいるのは、人目を惹く容姿をしていることを除けば、どこにでもいる普通の女の子だ。
「ねえ、ジグ。あなた、彼のどこが好きなの?」
「っ・・・」
「・・・・・」
「・・・ファズはいい奴だ。」
「それだけ?」
それだけなわけないのだが、とっさに言葉にしようとするとうまくいかない。
「うーん。でも、わかるような気がするのよねー。
 ファズってハンサムだし、皆に愛想良くて親切でいい人。
 ああいう人に自分だけ特別扱いしてもらえたら、どんなにいいかって思っちゃう」
ファズを褒める言葉を聴いて、まさか、という思いが頭をよぎる。
「・・・おい、ケイトン。お前ファズのこと、」
「いやだ!私、あの人をどうこうなんて思ってないわよ!」
ケイトンはさもおかしいというようにころころ笑う。
「・・・・本当か」
「ジグったら、そんなこと言っちゃうなんて、女の子みたいよ?」
「・・・・」
「まあ、怖い顔。
 大丈夫、しないわよそんな恐ろしい事。ジグからファズを盗ったりしたら、私、殺されちゃう」
「・・・・殺しはしない」
「・・・・真面目にそう答えちゃうところが逆に怖いわ。
 大変ねえ。二人の関係、皆には秘密にしてるんでしょう?
 それなのにやきもち焼きだしたらキリないじゃない」
「それでも・・・・まだ知られたくはないから。
 ケイトン、お前にも、黙っていてもらいたい」
「心配しなくても大丈夫よ。 
 ――――どうせ、私がなに言ったって、皆信じてくれないわ」
「・・・っ」
明るい口調で言われた言葉に、ジグは黙らされてしまう。
町に出れば石を投げられると聞いた。
本部の人間は事情を判っているとはいえ、かつて七騎士として奔放に振舞っていたノーマと同じ身体と記憶を持つケイトンを、よく思っていない連中もいるのだろう。
「嫌だジグ、そんな顔しなくてもいいのよ!」
「・・・・どんな顔だって?」
「同情してる、みたいなカオ。そういうのはいらないから。
 また今度、あなたとファズの素敵な恋のお話聞かせて頂戴。あ、でも」
ケイトンは自分の服からジグの部屋の合鍵を取り出した。
「これは返しておくわ。またなにかあると困っちゃうものね」
「ああ・・・」
差し出した手に鍵が乗せられる。ケイトンの長い爪の先が、ジグの手の真ん中に少し触れていった。
「あなたがこれを渡してくれたとき、私すごく嬉しかった。
 だからちょっと残念だけど、でもこんなもの無くたって、私達、友達よね?」


「それで、鍵は返してもらった」
「・・・そうか」
ジグの話を聞き終え、ファズは深く息を吐いた。妹に知られることはとりあえず無さそうだ、と知って心底安心したようだ。
「代わりに・・・・これをもらった」
ジグは細い鎖のついた、小さな鍵をポケットから取り出した。
「それは・・・・まさか」
「ケイトンの部屋の合鍵だ」
ファズのほっとした表情がみるみる強張っていく。
「それで・・・今度はお前が彼女の部屋まで行くつもりか?」
「ああ・・・」「やめろ、そんなこと!」
憤るファズの顔を、ジグはきょとんとした目で見つめる。
「あいつが、お前と友達じゃなくて、恋人になりたいと言い出したらどうするつもりだ!!」
ファズは声を荒げてにじりよってきた。
「いや・・・でもファズ、
 あいつは俺のことを女みたいに思ってるようだぞ」
「っそんなわけ、あるか!!」
苛立ちをぶつけるようにファズはジグに抱きつき、ベッドに倒れこんだ。
全くお前は、と耳元で不満をぶつけながら、ファズはぎゅうぎゅうと力を込めてジグを抱き締める。どこにも行かせないとでも言うように。


お前に合鍵をもらったと言ったら、ファズがやきもちを焼いたぞ。
今度ケイトンにあったら、そう言ってみよう。