TAB お題「脱出」
「後何分?」
「十五分です」
腕時計の光に照らされたバーナビーの硬質な横顔は焦りを滲ませていた。黒いアイマスクを嵌めた虎徹も円状に切り取られた空を見上げて拳で壁を叩く。
「完全に読まれてるな」
「焦りは禁物です。敵(向こう)もまだ動いていないようです」
バーナビーの流した髪がふわと浮いた。
はっと、二人の視線が絡み合い、虎徹は壁を叩いた拳に力を込める。
体中に漲るパワーが緑色に発光する。
「行くか」
「はい!」
虎徹はバーナビーの背中とそして膝をすくい上げた。
「バニーちゃん。行くぞ!」
バーナビーが抵抗する間も無くお姫様抱っこで閉じ込められた円筒形の密室から飛び出した。生身で受けるネクストのスピードに、バーナビーは思わず虎徹の首に両手を回した。
「中継が回っていなくて残念」
瞬時に背後へ飛んで行く言葉も、バーナビーにきちんと届いた。何せ。彼の耳はいま虎徹の口元のそばにあるからして。
作品名:TAB お題「脱出」 作家名:だい。