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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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【6/12サンプル】待宵の檻【臨帝】

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「いつまでそうしているつもり?」

かけられた声と差し出されたランプの明かりに。帝人はようやく日が落ちるような時刻になっていたことを知った。顔を上げて臨也の顔をぼんやりと見て、帝人はぱちぱちと目をしばたたいた。
「いざやさん…?」
「食事も取らずにまあ……」
床に本を積み上げて座り込んでいる帝人と同じ高さに膝を折って、臨也はくちびるを尖らせた。
「きみには健康的な生活をしてもらわないと困るんだけど」
「…すみません?」
ぼんやりと首を傾げる帝人に、臨也は深いため息を返した。
「帝人くん、きみ、自分の立場わかってるの?」
無造作に伸ばされた指が帝人の頬をむに、と摘む。
「いひゃい」
「よく伸びるねー、これ」
暫し面白がるように帝人の頬を嬲っていた臨也は、ひとしきり遊び倒した後に手を離すと、仕上げとばかりに帝人の頬をぺちりと叩いた。
「どこにいるのかわからないのも困るんだけどなあ……探すの面倒だし」
不思議な力を駆使する臨也のこと。居場所などぱっ、とわかりそうなものなのに、と帝人は思う。それに別に館の外に出たというわけでもないのにちくちくと責められるのは心外だった。
「部屋に篭って、大人しくしていろっていうんですか?」
今までの子達はみんな大人しくしていてくれたんだけどなあ。あんまり勝手をされると、俺としても対応を考えなきゃならないんだけど…と。ため息混じりに続けられた言葉に、帝人は臨也をじっと見つめながら答えた。
「でも、僕、退屈したら死んじゃいますよ?」
「は?」
なにそれ脅し? 呆れたように呟かれた言葉に、帝人はにっこりと笑って返す。
「ほんとうに死にはしなくても、多分病気になります」
さっき読んだ本にもあったんですけど、心の病気っていうのもあるんですよね? そう続ければ男はまるで頭を抱えるように額に手をやった。
「……人って、知恵をつけると扱いづらくなるものだね」
「でも、それが面白い、って言ったのもあなたですよ」
帝人の言葉に、赤い眼が感心したというように丸くなる。退屈が嫌いなのは俺も同じか、と呟いて、男は立ち上がった。
「とにかく、食事も取らずに篭りっきりというのは感心しない。病気になるっていうなら、食べなくてもなるでしょう?」
「そうですね」
「きみは俺の餌なんだから、そこのところはちゃんとしてもらわないと」
ぶつぶつと文句を言いながらも、積み上げられた本を手に取りながら歩き出す黒い背に、帝人は声を掛ける。
「臨也さん」
ありがとうございます。
ぴたり、と立ち止まった背に向かって続けた。
「ここを開けてくれたの、臨也さんでしょう?」
恐らく、あるじの意思がなければ、この館はどこの扉も開かないのだと思う。初日の風呂然り、今回のこの本然り。

振り返らない黒い背からは、否定も肯定も返ってこなかったけれど。