烈怒帝瑠に恋をした
なんなんだ…この気持ちは…
あいつを見ると…胸が締め付けられるように苦しい…
この想いは一体…?
さわさわさわさわ…
ミーンミーンミーンミーン…
夏の山…セミたちの合唱が聞こえてより暑く感じる。
「くっそ…セミうぜぇ…」
一人の男がベンチに腰掛けながら一人ぼそっという。
その男は、男鹿辰巳という不良高校生だ。
なぜ、この山にきたかというと…
“べる坊”という子供の修行に来たのだ。
「あ…男鹿…?」
丁度よく通りかかった烈怒帝瑠の邦枝葵が男鹿を目にすると、
すぐさま話しかける。
「邦枝か?なんでこんなところに…」
男鹿が何かを言いかけたとき、
邦枝の後ろからもう一人の烈怒帝瑠の女がひょこっとでてきた。
「…沙奈…?」
そう、その子は岩城沙奈という烈怒帝瑠の新人の女だ。
男鹿と同級生である。
沙奈は男鹿をみるとペコっとお辞儀をした。
(…っ…なん…なんで沙奈のやつがここにいんだよっ)
赤め面の男鹿を邦枝が見て不思議と思う。
暑いのかな?とか…そういうことを考えているようだ。
そんなことより、邦枝は男鹿の隣に座りたくてうずうずしている様子だ。
そんな邦枝に気がつく沙奈は、
「姐さん…暑いし座ろうか?」
そういって沙奈は男鹿と二人分ぐらい離れたところに腰掛けた。
邦枝は目でありがとうと沙奈に言って、男鹿の隣に腰掛けた。
数分後…
沈黙はずっと続いていた。
邦枝は頭の中から話題を探しているが…
何を言ったら嫌われないか…
何を言えばすかれるか…
そういうことばっかり考えてなかなか口にだすことができない。
(沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈沙奈…)
男鹿の頭の中は沙奈で混乱していた。
男鹿の頭のてっぺんからは湯気が出ていた。
しかも、真っ赤な顔。
正直、なんで沙奈を見るとこんなに暑くなるのかがわからない男鹿。
(どうしよう、何か話したほうがいいのかな?でも、下手に話すと
姐さんと男鹿の距離が遠ざかっちゃうし…どうしよう!!)
沙奈の頭の中では男鹿の中での邦枝の好感度を上げようとがんばっているが、
なかなか言葉が見つからない様子だ。
「お、男鹿!!好きな女の人とかいる!!?」
「姐さん!?」
沈黙に耐えられなくなった邦枝はついに、ずっと質問したかったことを
質問してしまった。
「好きな奴…」
男鹿は下を向き黙り込んでしまった。
そこで、沙奈がハっと思った…
自分が邪魔で男鹿は言えないんじゃないかと。
男鹿は姐さんが好きなんじゃないかと。
思ったのだ。
「姐さん、私は邪魔っぽいのでちょっと席はずしますわっ!!」
そういって沙奈は走ってどっかに言ってしまった。
(これでいいんだよね…姐さんのためだよね…っ!!)
ただただ走り続けていった…。
「沙奈…」
邦枝が沙奈の名前をぼそっとつぶやく。
どうして私のためにそこまでしてくれるのか…
邦枝の瞳には涙が滲みそうだった。
そこで、邦枝がさっきの質問をもう一度男鹿にしようとおもった。
「好きな…人は…いる」
「沙奈」
間なく即答する男鹿。
今男鹿の心の中では…
もう、悔しく悲しく切ない気持ちがたくさんだ。
沙奈が他の男と幸せになるのは嫌だ…
沙奈は自分だけを見てほしい…
沙奈っっっっ!!!!
END