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変わらないのは、優しさだけじゃないのでしょう?

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変わらないのは、優しさだけじゃないのでしょう?



お疲れ様でーす。
そう言ってぺこりとバイト先に頭を下げる鳴子を見て、仁太は変わらないな、と目を細める。
高校生になって、幼い頃とはがらりと変わってしまったように見えたけれど、内面はあの頃の鳴子とたいして変わっていない。
それに対して、嬉しさを感じているのか、安堵を覚えているのか、仁太にはよく分からない。
バッグを肩に提げてくるりとこちらを振り向いた鳴子と、ふと目が合う。

「…じんたん、」
「ん?」
「これからバイトでしょ?」

さっき、カウンターで聞いた話を確認する。
鳴子は肩から下げたバッグをきゅっと抱いて、少し硬い声で問いかけた。
めんまのために打ち上げる花火の資金は、ただの高校生がそう簡単に用意できる金額ではない。
ひとりではないものの、すぐには集まらない額だ。
引きこもりだった仁太が家から出て慣れないバイトを始めても、たいした額にはならない。
めんまのために何かをしてやりたいという気持ちが、仁太をバイトの掛け持ちへと誘ったのは必然だ。

ゆっくりと一歩を踏み出して、鳴子は仁太との距離を縮める。

彼のことは信じられるし、信じていたい。
けれど、幼い頃に亡くなった友人の幽霊が見えるという彼の話には、懐疑的にならざるをえない。
他に誰もめんまのことは見えないし、声だって聴こえない。
幽霊となっためんまが、どうして今更現れたのか。
それも、仁太だけに見えるかたちで現世に姿を現したのか、その理由も目的も、はっきりとしない。
彼女の願いとは何なのか確証が得られないまま、ただ彼女のために(そして恐らく、仁太のために)奔走する超平和バスターズ。
不確かなものに呼び寄せられた絆は不安定だ。
信じたい気持ちと、信じがたい現実に、鳴子の胸の裡は常に複雑だ。

「あぁ」
「そっか…うん。じゃあ、バイト頑張ってね」

頷いた仁太に、精一杯の笑みを送る。
珍しく同じシフトだったから、一緒に帰ることができるかもと思っていたけれど、そんなものは夢物語だったようだ。
バイト中に確認した現実を、もう一度、自分の胸へ突きつける。
ちくちくと胸の奥が痛んだが、仁太の邪魔は、したくない。
その思いで、鳴子はサンダルでぺたぺたと歩き出した。

「あ、…おい、待てよ、あなる」
「…ちょ、…なんで」

仁太を置き去りに歩き出した鳴子の背に、仁太の声がかかると、彼女の足はその場に縫い付けられたかのようにぴたりと止まってしまう。
その瞬間、仁太がさっと鳴子の隣に並んだ。
何がなんだか分からず、鳴子は真横に立った仁太を見つめる。

「なんでって、」

鳴子の問いかけに仁太はきょとりとしたが、すぐにバツの悪そうな顔でそっぽを向いてしまう。
たとえ視線が外れても、鳴子の鼓動は早鐘を打つ。
どくんどくん。期待なんてしていない。
彼が想っているのは、たぶん、いつだって、あの頃から変わらずに。

「…送る。途中までだけど」
「え? で、でもじんたん、バイト先、方向が…」
「いいから。おまえ、また連れ込まれるぞ、ラブホに!」
「なっ! そんなことないわよ! あれは、その、…あんなとこ行くなんて思わなかったし! 駅に行くんだと思ってたの! 夜じゃないし地元じゃないし!」
「はいはい」
「何その反応ー!」

先に歩き出した仁太を追いかけて、鳴子は頬を膨らませる。
想い人に妙な誤解をされてはいないものの、ここでどうしてそんな話になってしまったのだろう。
憤慨しながらぶつぶつと文句を仁太の背中に投げ続けていると、

「普通に考えて危ないだろ、こんな時間に女の子ひとりで出歩くのも…」

ぽつり、と。耳に流れ込んできた言葉は、恐らく彼の独り言だ。
上っ面だけの罵声を止めて、気付かぬうちに仁太の顔をじっと見つめてしまう。
突然止まった文句の嵐に訝しげな顔をした仁太が振り返り、鳴子と目が合う。

「…っ」

零れた吐息はどちらのものだったのか判然としない。
微妙な沈黙の中で、鳴子は仁太が居心地悪そうに目を逸らした理由を、何となく察した。

「心配、してくれたんだ」
「…当たり前だろ」

仁太の背を見つめて呟いた鳴子に、照れくさそうな答えが返ってくる。
ああ、と鳴子は目を細める。どくん、どくん。胸の鼓動は、早鐘を打つ。
想いが膨らんで、ぱちんと始めてしまいそうだ。
だけど、彼が想っているのは、たぶん、いつだって、あの頃から変わらずに。

「じんたん、」
「ん…?」

それでも、鳴子が想っているのは、いつだって、あの頃から変わらずに、変われずに。

「ありがと」
「……おう」

間を置いて、ぶっきらぼうな声。
気恥ずかしさから来る低い声は、年相応の男の子のもの。
切なさと嬉しさで胸がいっぱいになって、すこし、苦しい。

深呼吸を、ひとつ。
風が冷たくなった夏の終わりの夜を、鳴子は想いを我慢して、仁太の後に続いた。

■END
お付き合いいただいて、どうもありがとうございました!
( 2011.06.12. )