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【APH】夕焼け色の……【フェリギル】

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 海に、緋が落ちて行く。
 オレンジ色と黄色と、赤の混じり合った綺麗なそれは、すとんとフェリシアーノの心に落ちて、その度に、彼に会いたくなってしまう。
 鮮やかな紅い色の、彼の瞳とはまた違う色だけれど。
 それでも朝の明るい、黄色の強い光よりは、落ちて行くオレンジ色の暖かな光の方が、彼によく似ているとフェリシアーノは思うのだ。

 夕焼けは、彼の笑顔のようだ、と思う。

 眠りにつく人々を、静かに過ぎ去るその日を、そっと見守り、そっと包むような。ぱっと周りを温めるような笑顔ではないけれど、ほっとするその色がフェリシアーノは大好きだ。
 ただし、そんな種類の笑みは滅多に見る事ができず、それだけが残念だ、とも思う。快活に笑う姿とて、もちろん大好きだが。
 笑ったり、拗ねたり、怒ったり、喜んだり。感情はくるくると動いて、じっと眺めているだけでも飽きないし、そんな姿を見ているだけでなんだか幸せな気持ちになる。

 ふと思いついてフェリシアーノは携帯を手にし、写真を撮る。それをメールに添付して、本文は打たずに送信すれば、五分もたたずに返事が返って来た。

『綺麗な夕日だな』

 素っ気ない返事だが、その向こうにふわりと微笑む彼の姿が見えた気がして、フェリシアーノは微笑む。添付されて来た画像は彼の部屋からの眺めだろうか。夕焼けというにはもう少々薄暗くなった空、だ。
 夕焼けを見て、あなたを思い出したよ。会いたくなっちゃった。と送信すれば、照れているのか少しばかり返信が遅くなった。

『俺はそんな綺麗なもんじゃねえし、そのうち会えるだろ』
「そのうちじゃなくて、今、会いたいんだけどなぁ」

 気持ちをそのまま呟いて、フェリシアーノはくすりと笑う。自分だけが会いたい、と思っているようで少しばかり悔しいけれど、きっと本当は向こうも会いたいと思っているはずだ、と前向きに考える。
 大胆なようでいて、変なところで照れ屋なのだ。自分で言うのは構わないが、言われると照れる、ということが多いようだが。
 俺には、この夕日があなたみたいに思えたよ。そう送信すれば、今度はメールではなく電話で返ってくる。

「……もしもし?」
『恥ずかしい事ばっか言わないでくれよ。……声が聞きたくなっちまった』
「じゃあ俺の作戦勝ちかなぁ。会えないなら声だけでも、って思ってたし」

 なら最初から電話しろよ、と拗ねるように怒られて、あはは、ごめん。と笑いながら謝り、フェリシアーノは家に向かって歩き始める。

「夕日、すごく綺麗だよ。今日の色は特にギルベルトみたいだなぁって思ってた」
『だから俺はそんなに綺麗なもんじゃねえって』
「でも俺はそう思ったんだよ。ギルベルトみたいに暖かい色した夕日だな、って。だから、見てたら会いたくなっちゃったんだけど」

 会いたいなぁ、と呟いてみせれば、今日は流石に無理だろ、と嗜められる。こういうとき、一瞬で会いに行ける道具があればいいのに、とらちもない事を考え、フェリシアーノは笑う。

「もう何日会ってないかなぁ?」
『まだ三日くらいだろ』
「それってもう三日、だよ。俺は毎日だってギルベルトに会いたいって思うんだけど」

 あなたは違うの? わざと甘えるように問いかければ、電話越しの声がう、と一瞬詰まる。

『……そりゃ、俺だって、会いたいけど』

 そういうわがままは言えねえだろ、と恥ずかしそうに本音を言われ、フェリシアーノはくすくすと笑う。

「もっとそういうわがまま、言ってくれていいのに」
『恥ずかしいだろ、そんなの』
「恥ずかしくても俺は嬉しいし、聞きたいよ。俺ばっかり想ってるみたいで、なんか悔しい」
『別に、思ってないわけじゃなくて……』
「うん、ごめんね、わかってる。ちょっと意地悪が言ってみたくなっただけ」

 なんでも素直に言ってみせるくせに、恋愛事に関しては奥手だ。それに、彼の場合、口よりも表情の方が雄弁なのはフェリシアーノもよく知っている。
 フェリシアーノを照らす夕日は、照れながら自分に向かって微笑む彼の表情と同じ色をしている。暖かくて、愛おしくて、大好きな、色だ。

「明日は、会いたいなぁ」
『会いに行けたら、な』
「ギルベルトが無理なら俺が会いに行くよ」
『仕事はサボんなよ』
「はぁい。努力します」

 フェリシアーノちゃんの努力は当てにならねえからなぁ、と彼は笑って、酷いなぁ、と言いながら、フェリシアーノも笑う。
 せめて夕日が沈むまで。もう少しだけならいいよね。と勝手に決めて、フェリシアーノは会話を続ける。
 日が完全に沈むまで、およそあと十分。


 タイトル:確かに恋だった 様。【夕焼け色の恋をした】