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∽チカちゃんの学校生活

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・・・愛だ。・・・確かに愛だな。・・・パネエよ、あれ。・・・あたし知ってる、あの子最近休み時間もずっとレース編んでた!・・・あの紙バッグ一杯にレース?・・・全部手作りか、ひょっとして?・・・あーもーこいつらの三角関係ってどういう矢印でてんだよ?!
二月十四日。バレンタインデー当日の昼休みである。
まだ寒い空気の中、学校中が浮き足立っている。
伊達の周囲はそれは賑やかで、佐助は随分とその騒動を楽しんだ。
正直、朝に憶えていた「チカちゃんはどうするんだろうなー?」という思いを忘れるほど楽しんだ。
が、これは予想外だ。
そうして、こういうときほど見事なタイミングで伊達ちゃんは現れるんだよね、と考えた矢先、引き戸が開いて、当人が教室に戻ってきた。
「What’s the matter?なんか変な雰囲気だな。」
一斉に固唾を呑んだクラスメイトの視線を浴びて、少し片目を丸くしている。
「あ、伊達!これ、バレンタインのプレゼント!!受け取ってくれよな?!」
「・・・あー。Thanks、な。けど一体、何だこりゃ?間違いなく今日一番大物だけどよ。」
紙バッグを受け取る顔は苦笑を浮かべている。
「へっへー、天蓋!」
「てんがい・・・天蓋っ?!ってベッドのか!!」
「そうそう。お嬢様に是非って贈ったのに、蚊帳しか張ってくださらないって片倉さんのお姉ちゃんが凄い残念がってたからさ?」
ああ成程、片倉さんちから聞いた話にコレ幸いと乗ったのか、と佐助が納得したところでクラスメイトのざわめきが一際大きくなった。
・・・会長、天蓋つきベッド?!似合わないっ!・・・贈られたってんなら断れないかー。・・・そこから天蓋のサイズ教えてもらったんだろうねー。・・・ていうか、噂は聞いてたけど本当にお嬢様なんだな会長。・・・何にしても、愛だね。
ちなみに伊達は生徒会長を退いて今は級長なのだが、全校生徒に未だ会長と呼ばれている。
徳川家康は、生徒会長、現会長などと呼ばれることで区別されている。
「・・・ああ、やっぱりお前もレースだし・・・この前、作ってたのはコレか・・・。」
紙バッグの中をうつむいて伊達が見つめている。
たくさん作ったレースの幅広リボンを縫った天蓋が、視線の先にある。
心なし顔色が悪い。それはそうだろう。
物理的にも心情的にも重たいプレゼントだ。
ホワイトデーに何を返せば適切か、誰も想像できないだろう。
それに気付かず、チカは明らかについで、と言わんばかりの態で袋を佐助の胸元に押し付けた。
「あ、佐助もこれ、折角バレンタインだし、やるよ。」
「・・・俺様、基本的に気持ちが嬉しいタイプなんだけどさ・・・如実に愛に差が無いかな、コレ。」
トホリ、と佐助は肩を落として袋を見つめた。
透明ビニールの向こうには、10円のチョコが色とりどりに詰められている。
これは伊達のバレンタインを面白おかしく演出、もとい遊ぼうと画策した結果だろう。
件のレースにかかりきりで、チョコを手作りするゆとりがチカには無かったのが見て取れる。
自業自得と佐助は苦笑する。
バレンタインにレースのハンカチを贈ると伊達には効果的、と女子有志ファンクラブのメーリングリストに流したのは佐助だ。
それが学校中の噂になって、朝から伊達はレースのハンカチに大挙されていた。
ハンカチ程度なら、何かと煩い教師も口を出せない。
狙いは当たったのだが、これは当たりすぎた。
没収される可能性が低いのなら、何よりこれが最後のチャンスと噂に乗った生徒が例年より多く現れた。
縁飾りがレースのもの、総レースのもの、レース生地に刺繍がなされたもの、ともかく30を超えるハンカチが昼までに届けられている。
贈り主のリストを作っていた佐助は、いつの間にか下足箱や机の中や、佐助にさえ気付かれずに机の上に置かれていた贈り主不明の包みを見て、頭を抱えたくらいだ。
アンタどんだけ人誑してるの・・・?という声は飲み込んでいる。
ハンカチの枚数と送り主リストの人数が合わずにいるので、リスト作成発注主の伊達からはクレームが既に出ており、強く出られないのだ。
「なんだよー。お昼のデザートって言い張れるようなものって考えたらそれっくらいしか無いじゃん。文句があるなら伊達に食わせちまうぞ?」
「滅相もございません。有難くいただきます。」
これが無ければ母親からのチョコしか佐助は貰うアテが無い。
かすがには連日メールを送っているが、彼女はヴァイオリンの先生に贈る物を用意するのに必死なのだろう。
これまであった、三通に一度の定期的な返信が今回は一度も無い。
このチョコまで伊達に食べられてしまったら、なんてしょっぱいバレンタインだろうか。
「佐助も伊達もちゃーんと大好きだぜっ!だから愛に差があるとか言うなよな?」
天真爛漫というより、天然100%の笑顔でチカが笑う。
ああ、男女の機微なんか全然解ってないんだろうな、とクラスメイトの大きくなったざわめきをバックミュージックにしながら佐助はチョコの袋を見つめる。
本当に差がないのかなあ、と思う佐助の視線の向こうで、伊達が肩を竦めていた。

前・被服部部長はどうもバイらしい、と被服部の華々しい交友関係についてまた噂がついたのは後日談。
ともかく、伊達はその日の午後、プレゼントのインパクト勝負で既に負けたと歯噛みしているファンの子達に追いかけ回されて、受験前のストレスを悪化させ。
佐助は、贈り主リストの氏名不明者にどうも男子のパーセンテージが高そうな予測が立って、どうせホワイトデーのお返しを片倉さんにも手伝ってもらうんだろう伊達に、如何に上手く暈して伝えるかと悩んだり。
愉快で楽しいバレンタインは、最終的に溜息で終わって、何とも甘くない後味を残した。