BrilliantGreen
耳元で目覚ましが鳴っている。とりあえず止めようと思って手であちこちをばしばしと叩いてみるが、いっこうにやむ気配がない。どういうことだろう。
『るっびー!!』
必死に自己主張する目覚まし時計……いや、時計ではない。俺の耳元で鳴いているのは、
「……ルビー……?」
のっそりと目を開くと、ルビー・カーバンクルが憮然とした表情でこちらを見ていた。正確にはあきれて見下していた。
『るび!』
「ごめんってば」
せっかく起こしたのになぜ起きないのかと責めてくるルビーの頭らへんに手をかざす。こうするとなでられているような気がするのかルビーはすぐに機嫌を直してくれるんだけど、今日は違ったみたいだ。
『る、るびー!』
ごまかされないぞ、といった反応をされてしまった。改めて時計を見れば、
「うわ、急がないとな」
すでに時計は七時半を指している。早くしなければいけない。俺はぼさぼさの頭を手櫛で適当に整えながら部屋を出た。
三月の朝は暖房は必須だ。まず最初にリビングのエアコンを入れる。あと三十分ほどで暖まってくれるといいのだけれど。それからキッチンに行って、ヤカンにミネラルウォーターを入れて火をかけた。これでキッチンも少しは暖まるだろう。冷凍庫から一枚ずつ包んだ食パンを取り出して、バターをつけてトースターに入れて焼き上がりを待つ。その間に冷蔵庫を開けると、中身をさっと確認する。
「げ、ベーコンがないなぁ……。昨日十代が使っていたっけ。しょうがない」
脳内にはベーコンエッグがあったけれど、そちらはあきらめて固まりのハムを取り出した。こっちも消費しないといけないから、今日はこれにしよう。レタスとアスパラガスも一緒に取り出してから冷蔵庫を閉めて、「あ」と思いだしてもう一度開けた。卵を忘れていたじゃないか!
まだヤカンの中身は多少温まった水だ。ボウルを取り出して卵を割り入れる。砂糖と塩を適当に足して軽く混ぜたものを、火にかけていたフライパンに流し入れて素早くかき混ぜた。白身と黄身が絶妙のバランスでミックスされたスクランブルエッグができると、テンションあがると思う。
用意した二つの皿にだいたい半分くらいになるよう分けて、フライパンを洗って再び火にかける。ハムをちょっと厚めに切ってサイコロ状にする間に再度フライパンに油を入れた。
小さな鍋にヤカンの湯を移して、塩と油をすこしだけ入れる。火にかければすぐに沸騰を始めたのでアスパラガスを投入した。ヤカンの火は消しておく。音が鳴ると困るからな。
フライパンにハムを入れて表面を焼いて火を止める。たまにフライパンを揺らしながらレタスをちぎったものをサラダボウルに適当に盛って、上からドレッシングをかけた。あとはトーストとハムを皿に乗せてアスパラガスを切ってレタスに乗せれば完成だ。
もっと効率の良い作り方があるとは思うけど、今の俺にはこれくらいのペースでやるのがいい。
作品名:BrilliantGreen 作家名:なずな