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星はどこで微笑みますか

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 最終的に死や寿命に縛られる人間の人生は様様なもので雁字搦めになっている。対人関係、金銭、国家、学校、家族、衝動、欲望、矜持、世間体、環境、状況、学業、期待、恐れ、場所、立場、恋人、己。考えれば考えるほどに怖ろしくて仕方がない。死の先に何があるのかなどと言う恐怖などよりも数百倍、逃げても逃げても追ってくるこの鎖が怖ろしかった。
 サッカーと対人関係、自分の限界、立場、世間体、矜持、恨み、悔恨、爆発、憤り、嘆き、慟哭、痛み、眠れない長い夜、優しい人、努力すらままならない怠惰なこの身、八方塞がりになった瞬間、沸沸と沸き上がってきた言いしれぬ恐怖に俺は発狂しかけた。
このまま身一つで逃げ出して、その先、自分は何が出来る?全てを投げ出して逃げて、何になる?そしてそんなことは叶わないと知りながら、なおも俺はこの窓から暗闇に紛れて瞬く星星を渡り行く己を空想しては苦しみの溜息を漏らした。
あの人が怖い、襲い来る憂鬱が、怖ろしい。深淵のような苦しみを知った俺はただ空恐ろしいのだ。人生においてはあのような苦しみの連続なのだろうか。また何度も足を踏み外し、針山に体中を突かれるのだろうか。ましてや更なる苦痛が襲うのであろうか。想像しただけで身震いする身体を自身で抱きながら ぼうやり、と光る非常灯に怯えた。隣で寝息を立てる男にすら恐怖を覚える。

 十数年、たった十数年だ。然し俺はもう生きることが怖ろしく思えてならないのである。憂鬱でならないのである。だが考えても見ろ、死を選べばこそ最大の檻たるものに投獄されてしまうのである。俺が死すれば少なくとも誰かは嘆き、悲しみ、この抜け殻は死化粧などという陵辱を受けた後に花を持たされ、万人に晒され、炎へと誘われた後にも残る骨が墓という逃れられぬ箱に閉じこめられるのだ。仮に海へ身を投げても、結局は葬儀という身勝手な押しつけは行われ、一時的とはいえ他人の胸に衝撃を与えてしまうことになるのだろう。
俺は 死後、我関せず、 の精神を容易に消化出来ずにいた。抜け殻であろうと何であろうと、半身のようなそれが囚われていては本当の自由など、永久に、訪れないではないか。その上輪廻転生などというものをしたら最後、俺はその輪にすら囚われていることを意識し、いよいよ気を狂わせてしまうのである。

 ふと、かの有名な作家の、銀河を駆ける列車を思い浮かべてみた。死を迎えた少年と孤独な少年が己を探すことを意味した旅を共にするのだ。あの空想の世界に、俺は紛れてしまいたいのかも知れない。指し示される道というものに、縋ってみたいのかも知れない。未だに立つこともままならない両の足でいくら足掻いたとて、否、たとい正常な足で藻掻いたとすれ俺は正しい道に進める自身は全くない。

 煌めくことのない星空の元、俺は憂鬱に侵蝕されていく神経を思って、意識のない涙を流した。