募る思い
俺は慌てて受け取ることしか出来なかった。
何も言わず、ただ離れていく彼を見るしか出来ない。
俺は、そして…――
「怪我とかしなかった?」
「無い」
ぶっきらぼうに答えられた言葉でも
大丈夫だと分かって俺は安心した。
アキラはそんな俺に眉をひそめた。
馴れ馴れしくて嫌がられた?そう思い声が出ない。
アキラは溜息を一つ吐いて
「いつものことだ」
とだけ付け足し、また行ってしまった。
心配性の俺に呆れたらしい。
俺はアキラの背中を見ることしか、できない。
どうして俺はこんなに弱いんだろう。
守ってあげたい、助けたい、
そう願っても結局、何も出来ない。
こんなに近くにいるのに
こんなに大事なのに
こんなに…
こんなに…
想っているのに
手にあるのは、アキラが飲んでいた缶。
俺は、そして…――
缶へ口付けた