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4種のチーズを使ったケーキ

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頷くと、タツミは手近なイスを近くに寄せて座った。ふわふわの髪にイイ匂いが
する。シャワー直後らしい。
「ごとー居た」
ペットボトルの水がボトルの中で跳ねる音。
いつもは上げている前髪が昔みたいに額にさらさら落ちていて、ゴトーはほんの
僅かな間自分の年齢も立場も忘れるシアワセを味わう。
10年以上前、初めて会ったときのまま。
フィールドにいて雨に降られても同じになるのに、そのときは何も―――過去を
含めて感じないのに。


ぱさっ。と散るみたいにタツミが自分の腕の中に背中からもたれて来たとき、判
ってたようにそして消えないよう祈るみたいにぎゅってした、もうずっと前。




「帰んないの?」
pcのモニタを覗きこむというより、肩口にアタマを寄せて来るから。
「ココでやってもウチでも変わんないしな。オマエは今日も夜長くなるのか」
「のために甘いもん欲しい。コンビニ行こ」
言いながらも肩にのせたアタマをずらさない。それがそうっとだから、引き寄せ
たいのを我慢する。
急に謎の呪文の行列になったモニタ画面は、明日には意味のある内容に見えるだ
ろう。
「ねー後藤」
そんなの終わらせちゃってとかこっち見てとかのそんなに重くない要求というの
がある。
それを含めても、自分のキモチを先にするというのをタツミはそういえばした事
が無い。
サッカーやってるっていうのは、どこか割と肝心なところが繋がってないヤツが
多い中で。
わかんない奴の凶暴性を吸い込んでしまうところすらあって、だからそのプロテ
クタごとお湯につけたりぷちんと割ってやったほうがイイ。たまに無理にでも。
今日はそこまでではないみたいだけど。
それを最初にしてやれたとゴトーは勝手に思っている。そして確認はしていない
けど間違っていないから嬉しい。
「何食べたい? ジャンクフード以外。ちゃんとしたメシ」
肩が急に重くなって、それにほっとしながら。




コドモみたいなゴハンと続けると肩に触れている口が笑うからそこがシャツ越し
に熱を持った。それが耳たぶにかかるとやばいなんて、タツミは知らない。
「ごとーゴハン」
「ん?」
「なんか作って。ほらよくアラフォーなおっさんが良さげな食材ストックしてて
、ささって作ってんじゃん。そうゆうの」
いつもはクリアな声がもにもにになってて、それに妙な吐息をこっちが漏らしそ
うなのも。
「おっさん…」
「うん。あるよね?高いワインも」
「飲まないだろ」
「うん。そういえば日本帰ってからエール飲んでないのに最近気付いた」
「買っておこうか」
「えー後藤と飲むのヤダ」
イスの向きを素早くずらして、日焼けした顔を捕まえて唇を合わせる。タツミは
反射で少し動いたけどここに来たのはそれ目的で、だから大人しい。
小さなコドモみたいにじっとしている。
なのにカレはいつも、後藤がいつも充足と充実を―――多分愚かにも―――感じ
るくらいに成功報酬に似た味がした。自分はそんな感覚を踏み潰せると思うほど

薄い下唇を吸うと、小さな声がタツミから漏れた。
この状況も自分からそうしなかった、こんなのは予想もしてなかったように。い
つも。
ここまで持って来るのに、相手がなにをしたがっているのか判らないフリをする
。あるいは本気で知らない。



考えるのをタツミが止めた日も知ってるとゴトーは思う。



抱き上げると息が乱れていて、フィッツ(らしい)の柑橘系ジェルの香りが濃く
なった。
「ごとー。ハラ減った」
声がやわらかい。
それは2人きりのときタツミがぎゅっと両腕の全部で掴まるみたいにしてくるとき
と同じで、だから片手でpcをオフにする。





                           
                          オワリ