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涼風 あおい
涼風 あおい
novelistID. 18630
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温泉といえば卓球だよな!

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この日、日向と音無は2人で温泉旅行に来ていた。
友人としての関係から恋人としての関係になって、初めての旅行である。

2人きりで旅行、ならば、人目を気にせずいい雰囲気で夜の営みを…なんて、考えていないわけがない。
それはお互い言わずともわかっていた。

2人が体を重ねるのは初めてのことではない。
音無のかけたカマに日向がまんまとはまり、白状させられ、音無も同じ気持なのだとわかったときにはすでに日向は組み敷かれていた。
いや、むしろ組み敷かれて同じ気持なのだとわかった。
両想いの幸せに浸る間もなかった。
あまりの急展開に日向は
「どうして俺が下なんだよ!っつーか展開早いですからっ!」
とツッコミを入れずにはいられなかった。
しかし、抵抗も虚しく程なくして、今度は音無に突っ込まれることになった。
2人とも男なんだから、どうしたってどっちかが女役になるわけで、それはわかっていたが、まさか自分がそうなるとは思いもしていなかった。
「だって音無の方がかわいいだろ!かわいい方が女役でいいんじゃねぇのっ!?」
という日向の抗議に
「何言ってんだよ、日向の方がかわいいに決まってるだろ。だからお前が女役やれよ」
と返され、日向は空いた口が塞がらなかった。


「今夜どっちが上になるかを賭けて勝負だっ!」

その後何度か情事にふけることがあったが、日向はいつも突っ込まれる側だった。
それが不満で「なんで俺がいつも入れられる側なんだよ!」と毎回のように交代を訴えているものの、日向のその要求が受け入れられることは未だ一度もなかった。

だから、この提案をいとも簡単に受け入れられたことに疑問を持つべきだったのだが、あいにく日向の脳みそは、受け入れられた喜びを感じることに精一杯だったようだ。

張り切って腕まくりする日向はこの時まだ音無の策略に気づいていなかった。
音無の運動神経は悪くはない。
しかし、日向には野球部で鍛えられた動体視力と反射神経があり、それは音無より優っていた。
勝算があってこそ、挑んだ勝負だった。

「よっしゃぁっ!俺の勝ちだぜっ!今日こそは俺が上だからな!」
「負けました…。そんなに上がいいのかよ?…わかったよ、今日は日向に譲ってやるよ…」

音無がこんなに素直に負けを認めて譲歩してくれたことも少しは怪しむべきだった――。


「ほら、日向上乗れよ」
「ちょっ…ま、待てよ。今日は俺が上って…」
「だから、上、どうぞ?」

但し挿れるのは俺だ―そう音無の顔が言っていた。

「“どっちが上になるか”だったよな?だから上どうぞ?」
「ち、ちげーよ!俺が言ったのはどっちが突っ込む側かっていうことで…!」
「“どっちが上になるか”で勝負、したよな?」

音無の純粋じゃない笑顔を見て、ようやく日向は音無の策略にはまったことに気づいた。
口論では勝てないことくらいは日向だってわかってる。
だからこそ運動で勝負したのに…。

「音無ひでぇよ…」

涙目で訴えてみても、そんなこと音無には逆効果でしかなく、
この後更になかされることになるのであった。