アイロニーしか紡がないなんて、
お前はいつもそうだ、口を開いたかと思えば酷薄な笑みを浮かべて俺を「嫌い」だと言う。
俺も、お前のことを言えた義理では無いからお互い様なのだろうが。
うーん、でもそれって悲しいんじゃない?
互いが互いを嫌いあうことでバランスを保つ。なんて、さ。
愛が無いよね?愛が、
「と、いうことで!愛してみることにしました!」
「いっぺん死ね。」
「ひどっ」
「タヒね。」
「いや、一緒だからねっ!意味は」
「んー?うるせぇよ。一緒?おいおい脳味噌にまでワインが回ったか?ばか。【いっぺん】が取れたことによって【何度でも死ねよ】。っていう意味になったんだぜ?」
「うーわー、えげつねー。」
「だまれ、」
思ってたとおりの反応だけどね。
「で、何の用だ?」
「は、」
「だ・か・ら!何を企んでいるんだ?」
「・・・最初に言ったよね?」
「あー、耳鼻科にいくべきかな?俺。」
「いやいやいや!聞いていたでしょ!明らかに」
「エイプリルフールは今日じゃねぇぞ?」
「もうイヤ!この子ったら疑いすぎっ」
「いや、人間疑うに越した事はねぇぞ?」
「それ以前に、人間じゃないでしょ?」
「まぁな、でも・・・擬人化というカテゴリに入る時点で【ヒト】になっているわけだから・・・」
「ストップ!何の話!?ねぇ、何の話!?」
「え、だからヘタ」
「あーあーあー!何も聞こえない!」
「んだよ、」
「恐ろしい子!」
「古い。」
「ま、置いといて・・・。本気だって」
「説得力が無い、節操が無い、常識が無い、ムードも無い、第一俺にそっちの趣味はナイ。」
「ぐはっ!」
今のは、そーとーキタぞ?
なんてぇの?一撃必殺技?痛恨の一撃?とどめの一撃?
「でも、お前の顔は嫌いじゃない」
不意打ちだろ。
うな垂れていた顔を上げればエメラルドの瞳に吸い込まれそうになった。
反対色である赤い唇とよく映えていて程よい対比を醸し出している。
「髭、剃れよ」
「なんで、」
「キス、できない」
まったくもう、皮肉しか吐かない唇なんて・・・縫い付けてしまおうか?
いや、それよりもクセをつけてしまおうか。
俺の口付けというアイロンで。
そこで気づく。
俺は、きっかけが欲しかっただけなのだ。
国としてではなく、一人の男としてコイツを口説くきっかけが。
あーあ。
皮肉なのが、俺なのかコイツなのか分からなくなってきて・・・
でも、不思議と厭わしいとは思えない。
まぁ、そんな感情があったって良いよね?
作品名:アイロニーしか紡がないなんて、 作家名:でいじぃ