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ハガレン短編集【ロイエド前提】

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雨宿り






先程まで晴れていた空が機嫌を損ねたように、急激に雨が降り出した。

「雨だ」と、空を見上げて呟いたエドの手を取り、勢いを増し始める雨の中を走り出す。

石畳に打ち付けられた雨が跳ね返り、足元を濡らしたが、既にびしょ濡れに近い状態になっていた
二人にはそんな事はどうでも良かった。

唯、雨を凌げる場所さえ見付けられれば。

そうして漸く、骨董品屋の軒下に辿り着いたロイとエドは、肩で呼吸をしながら灰色の空を見上げた。

まるで動物がそうするように、ぶんぶんと頭を振り、髪の水滴を飛ばそうとするエドに、ロイは
ポケットからハンカチを出し、エドに差し出した。


「これで拭きなさい。」


エドは差し出された白いハンカチとロイの顔を交互に見詰め、そうして小さく「ありがとう」と言葉を
紡ぎ、ロイの手からハンカチを受け取った。

先程の水滴を飛ばす仕草とは打って変わり、丁寧にハンカチで髪を拭う。

ある程度の水滴を拭ったエドは、ハンカチを裏返し、再びロイへ返した。


「まだ濡れているぞ。」


ハンカチを受け取ったロイは、エドの顔を拭い、肩と背を軽く拭いた。

されるがままのエドの表情は、何処か恥ずかしそうで、思わず抱き締めてしまいたくなる衝動を抑えるのに

ロイは必死だった。


「大佐もちゃんと拭かなきゃ。」


そう言われて、「ああ」と小さく言葉を漏らし、ロイは袖で前髪を拭うようにかき上げた。

ぱらぱらと水滴が落ち、微かに髪が軽くなったような気がした。

体を軽く拭き、漸く落ち着いて、隣で壁に背を預けているエドを見る。

濡れた髪が数本、頬に張り付いている様が、何処か艶を含んで見え、ロイは目を細めた。

小さく開いた唇の隙間から細く吐かれた息が、微かに白く見えた。

雨の所為で下がった気温が、体温が上昇した体から吐かれる息よりも低い所為だ。

まるで捨てられた子猫のようだ、と、何と無くロイは思った。

ロイは腕を伸ばし、エドの肩を引き寄せた。


「え・・・」


一瞬何が起こったのか解らなかったのだろう。

きょん、とあどけない瞳でロイを見上げたエドだったが、その顔がみるみるうちに真っ赤に染まった。


「たっ・・・大佐・・・!こんなとこで・・・///」


慌てたように声を上げ掛けたエドの唇に、人差し指を当ててやる。


「誰も観てはいないさ。」


急な雨に、皆それ所では無いからと続けてやれば、エドは言葉を飲み込み頬を染めたまま小さく頷いた。

そうしてロイの体に、体重を預ける。

誰も観てないなら・・・雨が止まなければいい・・・

声には出さず、エドは心の中で呟いた。

とくん、とくん、と規則正しい音を刻むロイの心音を聞きながら、エドは静かに瞳を閉じた。

雨音の方が大きい筈なのに、やけにロイの心音ははっきりと聞こえた。




もう少し・・・

もう少し降っていて・・・

もう少しこのままで・・・





                               Fin.