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ラボ@ゆっくりのんびり
ラボ@ゆっくりのんびり
novelistID. 2672
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責任転嫁

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 アンタはずるい。ずるいなんて言葉じゃ表しきれないくらいにずるい。
 氷に浸けたように固めた感情をいとも容易く融解させて、そして溶けだした滴には見向きもしない。あとに残された表面化した気持ちと向き合った俺がいったいどんな気持ちでいるか、果たして一度でも考えたことがあるだろうか。いや、そんなことは考えるだけ無駄だ。彼は一切の悪気もなく俺の凍った気持ちを溶けさせるのだから。自分がそんなことをしているなんてことに気づくこともないまま。
 確かに俺にも少しくらい悪い部分はある。笑顔で出来た仮面に隠してしまうから彼が気づかないということもあるだろう。だけど──と思う。だけど、少しくらい気づいてくれても良いじゃん。
 そんなことを思うようになった自分に嫌悪する。昔の俺のままだったら決してそんなこと思いもしなかった。
 なあ、気づいてるか。アンタに会ってからだよ。
 忍として生きてゆくことが決まってから固めてきた感情が今になって緩くなっていく。アンタの一挙一動にこんなにも左右されていく。
 けれどそうやって振り回されるのは俺だけだ。
 前を向いて走り続けるアンタは決して後ろを振り向かないから(そして俺もそんなことを欠片も望んでないから)、俺のことなんか少しだって知らない。こうやってアンタに左右されて、馬鹿みたいに泣きたくなってることなんて。


「……佐助?」

「ん? どしたの旦那」

「いや……某の気のせいか。なんだかおまえが悩んでいるように見えたんでな」


 時々見せる心配してくれる所作にこんなにも心が揺さぶられる。その都度アンタが好きで好きでたまらなくなる。口に出せない思いだけが大きく大きく育っていく。誰にも摘まれない花のように悲しくひとつだけで。


「……あはは、俺様に悩みなんてあるわけないじゃん」

「それもそうだな」


 ふ、と小さく笑うその表情は一番好きなもののはずなのに、今はどうしてか苦しくて仕方がなかった。