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ぶかぶか☆キッチン

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それは、とある暇な平日の話。
なにやらこそこそと男子更衣室を物色する影が、一つあった。

あまりに無防備に、そして堂々と行動するソレ。
しばらく呆然と見つめてから、我に返り恐る恐るその背中に声を掛けた。

「……何やってるの、山田さん」
「はぅっ?!」

ビクリ。
とても分かり易い反応を示した山田は、ぐぎぎ、と音がしそうな程ゆっくりと相馬の方に振り向く。

「…そ、相馬さん…な、何でもないのですよ?!山田、別に相馬さんのキッチン服着てみたいとか、そんなこと思ってません!」

…うん。思いっきり願望、口に出てるから。
一歩間違うと変態っぽい台詞なのに、何で山田さんが言うとそういう風に聞こえないんだろうね?
俺が誰かに言ったら、間違いなく引かれそうな言葉なのに。
不思議だ。

「あ、あの…相馬さん?」

さーっと青ざめた顔に少しの期待の色が滲んでるのは、多分気のせいじゃない。
俺に見つかることなんてきっと、彼女の想像の範囲内だったろう。
キラキラと瞳を輝かせて、彼女はこう言った。

「折角なんで山田、これ着てみてもいいですか?」

……何が折角、なんだろうね?
俺、時々この子の言ってることがよくわからないよ…

「…ダメですか?」

…ダメ、と言いたいとこだけど。
俺、どうもこの子のこの目に弱いんだよね…
うるうると潤んだ瞳は、まるで子犬や子猫のおねだりのように見える。
…まぁ別に減るものでもないし、仕方ないから承諾することにする。

「…別にいいけど、出勤時間までには返してね」

一応予備もあるけど、釘を刺しておく。
でないと多分、返ってこないからね。

「ホントですか、相馬さん?!さすが山田のお兄ちゃんです!」
「…いや、俺君のお兄さんじゃないから…」

万歳!と喜ぶ山田さんに、俺はぁ、と大きなため息を一つ吐いた。


「……おっきいです…」
「……まぁ、そうだろうね」

数分後。
着替えを終えて休憩室に出てきた山田さんは、ともすれば勘違いされそうな率直な感想を俺に聞かせてくれた。
今ここにいたのが俺だけで、本当によかった…
これ以上誰かに弱みを握られたら困るからね。
楽しそうにくるりと回る彼女の袖も裾もぶかぶかで、何だかちょっとエロく見えてしまう。



(…子供相手に何考えてるんだか…)

男の性か、チラチラと見え隠れする白い肌に自然と目が行ってしまう。
その視線に気付いたのか、山田さんはニヤリ、と、悪戯な笑みを浮かべた。

「…相馬さん、山田の裸、気になりますか?」
「ちょ…っいきなり何言ってるの?!誤解を招くような質問はしないで!」

ちょっと図星なだけに、余計に必死に否定してしまう。

「素直になっていいんですよー?山田、相馬さんのためなら一肌でも二肌でも脱げます!」
「脱がなくていいから!」

山田さんの一言に、ドキリと大きく胸が鳴る。
言葉では必死に否定しながら、その実期待している自分がいた。

(…何て、絶対言わないけど)


楽しそうに笑う、可愛い俺の“妹”。
せめて彼女が本当の家族の下に帰るその日まで、俺は守り続けよう。
(…まぁミイラ取りがミイラになる可能性は、無きにしも非ず、だけどね)

今は少しでも、この平凡な日々が長く続きますように。



「…なんですか、アレ」
「……ま、いいんじゃね?」
「…いいんですか」
こっそり覗いていた人々がいたことを、珍しく彼は知らない。

作品名:ぶかぶか☆キッチン 作家名:響月柚子